読書の欠片ネタバレあり
10≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫12
スポンサーサイト  [Edit]
-------- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
|
シェイクスピアの密使  [Edit]
2006-11-15 Wed
 昨年刊行されたシリーズ3作目。続けて行っちゃったけどウィッジの成長に合わせてもっとゆっくり読んでもよかったな。14歳で本当の人生がはじまった分、それまでの分を取り戻すように吸収するのも早いのだけど、ゆっくり成長するのがウィッジらしい。この文章のリズムがなんだかホッと安心できていいのです。

 作中的には前作から数ヶ月後の冬から春にかけてとさほど時が過ぎているわけではないけど、ウィッジもそろそろ16歳というお年頃、前二作に比べるといろんな面で大人になりかけてるな~。今回ウィッジは初恋と将来の仕事というステップを登り始めます。初恋の相手はシェイクスピアさんの娘・ジューディスで、これはまあ人生の法則通り叶わずに、というか何もできないうちにあっけなく終わってしまうんだけど、小さな嘘から出た「芝居を書く」という夢の方は少しずつ育っていくのが一番の読みどころでしたね。前作ではシェイクスピアさんの創作姿が面白かったんだけど、今回はその階に立ったウィッジがアイディアを思いついては自分でツッコミを入れ、書いては燃やし、紆余曲折を経ながらシェイクスピアさんが投げ出した台本を書き上げていく過程が微笑ましくも頼もしい。

 しかもその台本は実際に現代に残ってるもので、シェイクスピアと誰かとの合作らしいんだとか。その本がああやって書かれたと想像するのは楽しいです。相変わらず史実をうまく、しかも物語として面白く組み込んであっていいな~。長く民衆に慕われ演劇も保護してくれていたエリザベス女王の容態がいよいよあぶないという不安定な政局を背景に、カトリックとプロテスタントの宗教対立を絡めて、揺れ動く当時の演劇界やライバル劇団との関係がウィッジの目線で描かれるのも面白いです。

 先の見えない人生にどう立ち向かうのか。現代と比べてもっと人の力の及ぶ範囲は狭く、時にはあっけなく運命の女神に攫われたりもするし、努力が必ずしも報われるとは限らない。ウィッジにしろ他の少年俳優たちやすでに名を成している大人たちにしろ、スカッと思い通りに進むことばかりじゃ決してない。あのシェイクスピアさんだって家族のことで悩んだり思うように書けなくて浮き沈みしたりするんだし。シリーズ通して随所にほろ苦さがあったのが却ってよかったなあ、それに挫けないひたむきさが最後に残るから。シェイクスピアさんの芝居にも悲劇と喜劇がごちゃ混ぜなのがあるとどっかに書いてあったような気がするけれど、人生ってのもそういうものですから。

シェイクスピアの密使 ゲアリー・ブラックウッド(白水社)
novel | ゲアリー・ブラックウッド
CM:0 | TB:0 |
シェイクスピアを代筆せよ!  [Edit]
2006-11-13 Mon
 シリーズ2作目、前作ではウィッジは世界や演劇、仲間や家族といったものにはじめて触れた生まれたての雛のようでしたが、今作では少しずつ自分の足で歩き始めたみたい。前作で面白い!と思った設定や17世紀の雰囲気がさらに生かされ、何よりウィッジの成長物語になっていてすごくよかったのです。

 台本を盗みに紛れ込んだはずの宮内大臣一座で、徒弟として家族の一員のように迎えられ、別の誰かを演じることにもすっかり魅了されたウィッジは、日々稽古をしたりシェイクスピアさんの読みにくい台本を書き写したりと忙しくも今までになく満ち足りた日々を送っている。しかし春になったロンドンでは恐ろしいペストが流行りだす気配があり、大勢の人が劇場に集まる公演を禁止された一座は、郊外の町への旅回りをすることになるのだ。

 今回はウィッジの速記術と見よう見真似の医術が大活躍でそれも楽しかった。旅回り中に右手を怪我したシェイクスピアさんの口述筆記をすることになるんだけど、そこでシェイクスピアさんが創作する様子や為人が垣間見えてくるのがすごく面白いのだ。当時のイギリスの社会や街をまるでそこにあるように描くその筆は、シェイクスピアさんだけでなくアーミンさんやホープさん、ヘミングズさんら実在の人物に想像で色付けし、本当にこんな人が生きて動いていたかのように自由に魅力的に描き分けていく。一座が直面する苦労と、それ以上に大勢の人々に芝居を見てもらうことの喜び、そこに自分の生きる道を見出している大人たちにリアリティがあるからこそ、ウィッジはじめ少年俳優たちがそこで自分を見つけたいと葛藤する様子にも説得力があってぐいぐい読ませます。

 ヨークシャーなまりの語尾がかわいいウィッジも、朴訥なんだけど場を和ませるウィットがあって前作よりずっと魅力的に描かれてますよ。かりそめの居場所だった一座やホープさんの家が好きになればなるほど、ずっとここにいたいと思えば思うほど、いつか必要とされなくなったらどうしようと恐れるウィッジは、他人とぶつかることを避け、自信のなさから欲しいものを欲しいと言えず、父親かもしれない男と一座との間で揺れるわけで。まだまだ一人の人間としてよちよち歩きをはじめたばかりのウィッジの歩みは手探りで心許ないんだけど、素直で裏表のない性格は素直に見守ってやりたくなります。

 特に面白かったのは、ウィッジの人間としての成長が役者としての成長と重なっていくところですねー。冒頭でアーミンさんに「おまえがほしいのは、もっと大切なものじゃないのか。お客の沈黙、そして涙だろう」と言われても雲を掴むようだったウィッジが、演技の勉強とは別のところで、他人や自分と向かい合うことで、最後にそれを実感として手にいれるのにはじ~んとくるものが。アーミンさんは前作以上の存在感で好きだなあー。役に自分の痛みや苦しみを入れることを教えてくれたのもアーミンさんだったし。やり方を教えてくれるわけじゃないけど、道を示して見守ってくれる感じ。剣も強いしな。ラストのウィッジは北島マヤばりに目覚めてくれて、演劇ものとしても面白いのだよ。シェイクスピアさんといい作者は演劇にも造詣深くて好きなんだろうな~。

 それにしてもサンダーがああいう運命を辿るとは思ってなかった…;ウィッジにしろサルにしろ、あの時代の子供たちが背負わなければならない現実はなかなかに過酷で、だからこそそこで生きようとする彼らの必死さがリアルに伝わってくるんだけど…重かった。テティもあんなに小さいのに大きいものを背負ってて、出番は多くないけどこの先が気になる子ですね。ウィッジの成長物語というだけでなく、こういう重さが随所にあるのもこの物語を深めてるような気がしましたよ。

シェイクスピアを代筆せよ! ゲアリー・ブラックウッド(白水社)
novel | ゲアリー・ブラックウッド
CM:0 | TB:0 |
シェイクスピアを盗め!  [Edit]
2006-11-01 Wed
 ヨークシャーの孤児院で育ったウィッジは7才の時に徒弟として引き取られたブライト博士に、英語とラテン語、そして自ら考案したという速記術を学ばされる。やがて14才になった彼は新しい主人に無理やり引き取られるのだが、その仕事は速記術を使ってロンドンの人気劇団、宮内大臣一座の「シェイクスピアさん」の台本を盗むことだったー

 シリーズが何冊か出てて図書館時代に気になっていた本。シェイクスピアは結構好きで昔よく読んだのです(つっても代表的なとこだけですが)。てっきり現代物で、高校の演劇部が舞台とかかなーと根拠レスで想像してたんですが、何と本物の「シェイクスピアさん」でした。出てくる人物たちも実在した人が多いというし、当時の演劇界やロンドンの様子が垣間見れるのも楽しいし、何と言っても速記術で台本を盗むというアイディアが面白い!と、展開を楽しみにしながら読みました。

 結局ウィッジははじめて見た演劇に魅せられて、任務が嫌になってたとこに速記したメモ帳を無くして逃げ出し、宮内大臣一座に身を寄せることになるわけですが。想像してたような、台本を巡っての丁丁発止や速記術でウィッジが大活躍…てな方向とはちと違って、今まで家族や友達という存在を知らなかったウィッジがちょっとずつ変わっていくという普遍的なとこがメインの物語でしたね。憎まれ役ニックの思春期のもどかしさなんかYAっぽいとこもあったけど、はじめて広い世界に触れたウィッジの自我の目覚めは児童書に近いかも。でもこれからウィッジもやっと自分の人生歩き始めたわけだしね、続きはもっと成長して青春なあれこれもあるかも?本格的に芝居の道に進むのかな~。速記術もおおっ!という活躍の場があるといいなー。

 あと面白かったのが、当時のロンドンや劇団の様子がまるでそこにいるように描かれてるとこ。女性が舞台に出ることは許されてなかったため男の子が女役をするのもへーって感じだし、稽古の様子も楽しかった。さり気なく出てくるシェイクスピアさんも味があってよかったしね。ジュリアンはこの後また出てくるかなあ。フランスに渡るってんで、おおーコメディ・フランセーズ!…と思ったけど時代がちと早かったす、残念・笑

シェイクスピアを盗め! ゲアリー・ブラックウッド
novel | ゲアリー・ブラックウッド
CM:0 | TB:0 |
| 日々是好日 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。