読書の欠片ネタバレあり
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プロイスラーの昔話 全3巻  [Edit]
2006-07-03 Mon
 「真夜中の鐘がなるとき-宝さがしの13の話」
 「地獄の使いをよぶ呪文-悪魔と魔女の13の話」
 「魂をはこぶ船-幽霊の13の話」

 中世ドイツとその周辺の国々に伝わる昔話をプロイスラーが系統立て、それを改めて自由に語り下ろした3編。作者の「読む前にちょっとひとこと」にある通り大抵真夜中のお話で、気味悪かったり全然めでたしじゃなかったりする民話から採ってるのだけど、語り口はむしろちっとも冷たくなく、それぞれのお話の前にプロイスラー自身のちょっとした解説がついてるのも親しみが湧くというかあたたかい感じです。

 「宝さがし」にしろ「悪魔と魔女」にしろ、昔話には契約とか約束ごとが大事ですね。呪いも魔法も生活の中に生きている土壌自体にわくわくするというか惹かれます。「魂」は幽霊の話なんだけど、ポルターガイストってホラー専門かと思ってたら普通に昔話に出てくるものなのね…さすがヨーロッパ(違)。ファウストとメフィストテレスの話があったり(偉大な小説やオペラも元はこういう民話なのね~)、錬金術師として有名な方の名前が出てきたりするのも面白かったわ。

 これを読むと「クラバート伝説」も元はこのくらいの民話だったんだろうな。民話ってあくまで出来事を淡々と語ったもので、個々の心理までは深く踏み込まないものなので(だから却って普遍的で何らかの教訓を含むわけですが)、「クラバート」の心理の深さや人間像ってのはやっぱり作者の筆によるものなんだなあと思った次第。「悪魔と魔女」の巻にはその後のクラバートの話が収められてましたが、民話では親方との対決の後、見習いたちは解放されて魔法を自在に操れるようになるわけですね。「クラバート」では確か「親方から教わった魔法の力は失われる」だったと思うので、このあたりにも民話をベースにしながら作者なりのテーマが語られてるのねと思ったのでした。

真夜中の鐘がなるとき?宝さがしの13の話 地獄の使いをよぶ呪文?悪魔と魔女の13の話 魂をはこぶ船?幽霊の13の話 オトフリート・プロイスラー(小峰書店)
novel | プロイスラー
CM:0 | TB:1 |
クラバート  [Edit]
2006-06-15 Thu
 中世ドイツの一地方…ポーランドや作者の故郷ボヘミヤ(チェコ)に近いスラヴ系のヴェンド人の民話である「クラバート伝説」をベースにした物語。実は私昔からこのあたりの雰囲気に弱くて、物語に出てくると何故か惹かれて引っ張られる。華々しく明るい表舞台と対照的に歴史的風土的な暗さとか重さみたいなもの…子供の頃は怖いと感じていた部分なのに、大人に近くなってからは心のどこかが揺さぶられるのです。

 …と言ってもこのあたりに詳しいわけでは全然なく、クラバート伝説ももちろん知らなかったので軽く検索してみたんだけど、元伝説にはヒットしませんで。でもこの地方では水車小屋が独特の位置付けにあったり、水車にまつわるちょっとダークな民話は多かったみたいですね~。12人いないと動きを止めるとか、回転する輪が順番に死んでいく恐怖の象徴だったり。魔法とも深い関係にあるようです。この独特の雰囲気を色濃く残すこの物語にはぐいぐい引き込まれてしまった。「ファンタジー」とは違う、土着で生活に根付いてる感じがすごくいいんだなあ。

 孤児で浮浪生活を送っていた少年クラバートは、ある日夢でコーゼル湿地の水車場へ来るようにと告げられる。そこで12番目の職人見習いになるのだけど、実はそこは「魔法の学校」でもあったのだ。昼は粉曳き職人として働き、金曜の夜はカラスに姿を変えて魔法を学ぶ…とは言ってもホグワースみたいな学校とは雰囲気が全然違う。魔法を覚えることで作業を楽にしたり他人を支配したりもできるし、ここにいれば放浪することも食べ物や眠る場所に困ることもない。だけど職人たちにはどこか諦めの混じった重い雰囲気が漂っているのだ。最初の1年は魔法のおもしろさに熱心に学んだクラバートだったけど、その大晦日の夜に自分たちの運命を知る。彼らは一年に一人、親方の代わりに死ななければならない。弟子たちは魔法によって親方に縛られ生死を握られているのだ…

 でも全編ダークなわけじゃなく。少年クラバートの微笑ましい恋(相手から姿見えなくても窓の外からしか眺められなかったり)が青年になるにつれて想いが深まっていったり、夢でも会えたら風景や緑まで輝いて見えたり、職人たちの普段の気安いやり取りとか明るい要素もちゃんとあって、彼らの日々の生活は決して絶望だけの真っ暗なものではないんだけど、だからこそ常につきまとう死の影…十字架もない塚の列とそこを自分で掘り返す姿、落とされた花、夢で語りかける背中…それが却って際立って残るのよね。

 最初の1年が3年に相当するので、少年から青年へと変わっていくクラバートもいいけど、他の職人たちも印象的。運命に絡め取られてしまうトンダとミヒャル、大事な役目を担ってるまぬけのユーロー、仲の良かったいとこの死で変わってしまうメルテン、一抹の清涼剤ローボシュ。特に静かでやさしいトンダの悲しみとか絶望には胸掴まれます…。ミヒャルとメルテンのコンビも決して明るくない水車場の生活になくてはならないものだったのに…。でも少年から青年くらいの職人たちの姿が立っていて、死を受け入れて生きていかざるを得ない恐怖や諦めがしっかりと描かれているからこそ、魔法に支配された伝説の水車場がこれだけ重い現実感をもって感じられ、魔法を失ってもこの輪を断ち切ろうとする決意に繋がっていくのだ。

 魔法に対する考え方も西洋ファンタジーとは大分違うなー。テーマでもあると思うけど、何でも与えてくれるけど生きていくのに必要がないもの、むしろ人をダメにするものとして描かれてるような。最後魔法を捨てるところは、描かれてないけどそれをありがたく思わなかった者もいたんじゃないかなーと思った。仇である親方にも背負った過去があって一概に善と悪とは分けられなかったり、ハッピーエンドの中にもそういう複雑な人間心理が重層的に織り込まれてるのが物語を深めておりました。

 ところで宮崎監督の「千と千尋」はこの物語が元になったとかインスパイアされて作られたとかいう話だそうですねー。言われてみれば話の骨格に面影があるような…雰囲気は全然違うけど。そして映画ハウルが黒い鳥になる意味がいまだに理解できてなかった私ですが、この影響かもって言われると納得!意味っていうより魔法に支配されてたりその苦悩をイメージしてるのかもしんないですね(?)

クラバート オトフリート・プロイスラー(偕成社)
コメントを読む(4)
こんにちは  by くろにゃんこ
私も、「クラバート」大好きで、大人になってからもう一度読み、あらためて感動をおぼえました。
いい作品は、何度読んでも、感動するものですよね。
「千と千尋」を観たとき、「クラバート」を思い出したんですが、インスパイアされたものだったんですね。
>くろにゃんこさん  by banri
はじめまして、コメントありがとうございます。
私ははじめて読んだのですが、重みがあってずしりと残る雰囲気がとってもよかったです~。
塚を探そうとするところとか夢とか湿地とか、しばらく脳裏から離れないくらい印象的で。
「千と千尋」への影響は監督がどこかに書かれたということでしたけど、クライマックス部分は昔話には普遍的なエピソードだと思うんで、縛られてるハクとかもっと底の方に通じるものがあるような…と思いましたです。

くろにゃんこさんのblogも気になるところあちこち読ませていただきました~。
梨木さんの本質に迫るレビュー群、とっても読み応えがありました。そして私も遅ればせながら現在ウッドハウス症候群の一人です…笑
でしたら…  by 兎に角うさぎ
こんばんは。
クラバートの原型については、似たような話があちこちにあるようですが、プロイスラーが自分の集めた昔話を再編集した「プロイスラーの昔話」全3巻にクラバートに盛り込まれたエピソードが入っています。
『地獄の使いを呼ぶ呪文』にデカ帽、トルコ軍との戦いの2つの話が収録されていて、原型が少し見られます。こちらも面白いですよ。こちらは最寄りの図書館にあります(笑)
クラバートの物語の絵本版もあるんですが、日本語版が出ていません。ドイツ語版なら所有しておりますが、読んでみます?
じゃあ予約お願いします…笑  by banri
ふむふむ。そのエピソードは「クラバート」が出てくる話なのかしら。それとも水車場にまつわる民話を盛り込んだのかな~。私的にはこの水車場という存在がものすっごく強烈だったんですけど…雰囲気に呑まれるというか。
その「昔話」全3巻にはやっぱりこの地方とか水車場系の民話がいろいろ採られてるのかしら…「地獄の~」はその第二巻?気になります。取りあえず最寄りの図書館へ行ってみます・笑

ドイツ語版の絵本…それは読むというより見るでは…。
でもよかったら見せてくださいですv
novel | プロイスラー
CM:4 | TB:0 |
大どろぼうホッツェンプロッツ  [Edit]
2005-10-25 Tue
 一昔くらい前、NHKの短いアニメで時々やってたような気がするんだけど中身はとんと記憶になかった…(関係ないけど同じ頃「ルドルフとイッパイアッテナ」も時々観てていい話やなーと思ってた。てっきり古典なんだと思ってたら当時まだ新しい童話だったのを知ってびっくりしたおぼえが)。「ホッツェンプロッツ」ってシリーズが3作も出てるし「主役」なんだろうからどこかまぬけで愛すべき泥棒なのかと思ってたら、いやー意外としっかり悪人でしたね(笑)。友達の魔法使いの方がまだご飯くれるだけいい人なくらい…2作目3作目になるとちょっとは性格変わってくるのかな~?彼には彼なりに、孤独で誰も信じない悪党になるまでには多分いろいろと人生の紆余曲折があったんだろうし(?!)ちょっとは改心していい人になっちゃったりするのか、それともこのまま詰めが甘いところが可愛気の泥棒のままなのかどっちかなー?

 奇しくも子供がどろぼうを捕まえる話が続きましたが。これは魔法や妖精が出てくるので民話やおとぎ話に近い味わい…かな。そう言えば外国の民話って結構コワイものが多かった気が。悪い人は容赦なく酷い目にあったりするのよねー(意地悪なお姉さんが足切られたりするんだ、ヒー;)。この話も軽快な割には意外とコワいぞ…ホッツェンプロッツは改心するが吉だと思います(笑)

 魔法使いや妖精といった存在は好きだったにも関わらず、それが出てくる物語で好きだったのはっていうと意外と思いつかないんだよなあ。世界観からして違うファンタジーに限らず、こんな風な童話もあんまり覚えがない…。触れる機会があまりなかったのか、それとも昔っから妙に現実的な子供だったのかもしれません(^_^;;。その分を埋めるべく(?)民話や伝説ベースの物語やファンタジーっぽいものをちょこちょこ読む予定。プロイスラーは民話や魔法をもっと重苦しく扱ってそうな「クラバート」が気になってますー。

大どろぼうホッツェンプロッツ オトフリート・プロイスラー(偕成社)
novel | プロイスラー
CM:0 | TB:0 |
| 日々是好日 |
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