読書の欠片ネタバレあり
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天と地の守り人 全3巻  [Edit]
2007-04-13 Fri
 「守り人」「旅人」両シリーズがこれで完結。ずーっと待ってた人もいるのに、わたしは去年読み始めてとんとん拍子に来ちゃいました、すみません・笑。

 30才の女用心棒バルサの生き方と、この世界と重なって存在するもうひとつの世界ナユグ、そしてその影響に翻弄されるチャグムやアスラたちを描いた「守り人」シリーズと、皇子としてチャグムが国と国との関わりや民の幸せを探す「旅人」シリーズ、大きく広がっていった二つのシリーズが本当にこの三部作で交わって終わるのか?と思ってたんだけど、いやー見事でした。今までの両方のシリーズで語られていたことがすべて意味を持ち、大きな世界の物語がひとつになっていく。読み終わった今思い返しても、よくたった3冊でこれだけの物語を語り尽くせたなあ~~と感心してしまいます。すごい。そして本当に両シリーズの完結にふさわしい面白さでした!

 チャグムが生きていることを知らされたバルサは、彼を探しにロタへと向かう。南の大国タルシュが新ヨゴを攻める準備を着々と進めている中、時間との勝負で同盟を結ぶべくチャグムはロタのイーハン王子の元へ、そしてカンバルへ。一方チャグムの父である新ヨゴ皇国の帝は、鎖国して兵を集め、民を犠牲にしても「国」と「王の神性」を守ろうとし、タンダたちは草兵として戦いの最前線へと駆り立てられていくー

 まずは1作目以降交わることのない道を歩いていたバルサとチャグムがようやく再び会うことができてよかったー。もちろんそれはチャグムが皇子のままであれば決して交わらなかったはずで、流浪の果てに海に飛び込むという無茶をやったからですが。あまりに先が見えない中を孤独に泳いでいってしまったので心配してたんだけど、最初は11才だったチャグムももう16才。世界を見てしまった今、国に縛られナユグを夢みていた彼はもはや、自分が穏やかに平民として暮らしたいとは思っていない。やっぱり少し痛々しくはあるけど、大人になりつつあるんだよね。

 とにかくそれぞれの国の話が平行して語られるんだけど、これがもうファンタジーで括るにはリアルなのよね…戦いの描写の容赦のなさったら銀英伝を彷彿とさせるし、ただ各国の思惑を俯瞰するだけじゃなく、王や民それぞれが背負っている思いが丁寧に描かれてる。単純に善悪に分けられず、それぞれに矛盾も抱えつつ生きるしかないから…重いです。そしていくつもの流れが交わったところから別の話へとつながっていく展開がすばらしくて目が離せなかったす。

 こちらの世界の国の動きや思惑も読み応えたっぷりで、特に前作「蒼路」で最も気になる人物だったヒュウゴは、今回本当に物語の核の部分を担ってましたね~。タルシュに滅ぼされたヨゴの民でありながら、タルシュの密偵となっていずれは宰相になるべく動き、チャグムを攫い新ヨゴを攻める足がかりを作りながら、本当は誰よりも大きな絵を描いている。帝国と言えどただ果てしなく攻め取るだけではやがて終わりが来る。帝国にとっても枝国にとっても、北の国々にとっても最も幸いな未来が来るように。

 反対にバルサはもともと国なんてどうなっても民が生きていければいいわけで、そのバルサから見た物語も別の側面を見せてくれるし。国の物語とは別に、人を助けるために人を殺す用心棒としてしか生きられないバルサの人生も、もいちどゆっくり振り返れたり。「だけどさ、こんな人生だってかなしみしかないわけじゃない」 落ち着いて平穏に暮らすことができないせいで微妙だったタンダとの関係も大きな転機を迎えるしね。いやーすげぇ愛でした…(平伏)

 そして、前々からちらちら出てたもうひとつの世界の異変、何百年かに一度来ると言われてる「ナユグの春」がこうつながるのか!とすっごくカタルシス。あちらの世界ってのが作者の持ち味の土着な世界観ですごく好きなんだけど、精霊たちの王の婚礼の季節がこちらの世界にも多大な影響を与えるというのはファンタジーというより自然の姿や古い信仰に近く、なんかこう敬虔で壮大な気持ちになります。人間界と自然界ってこういう風に相互につながってるよなって。

 とにかくいろんな物語に満足でした。こんな風にこの先も世界が続き、生きてくんだろうなって信じられて物語が終わるのってすばらしいですね…。ね、主上…<え

天と地の守り人〈第1部〉 天と地の守り人 第2部 (2) 天と地の守り人 第3部 (3) 上橋菜穂子(偕成社)
novel | 上橋菜穂子
CM:0 | TB:0 |
獣の奏者 I 闘蛇編/II 王獣編  [Edit]
2007-04-10 Tue
 闘蛇を操って王国を守る闘蛇衆の村で育った少女エリン。厳しい戒律を守り森を渡り住む「霧の民」でありながら、かつてエリンの父と一緒になった母は、類稀れな獣ノ医術を持つ優れた闘蛇衆だったが、ある日世話をしていた闘蛇全てが死んでしまった咎で残酷な刑に処せられる…。それを救おうとしたエリンもまた闘蛇の群れにまかれたのを見て、母はとうとう「禁じられた操者の技」を使ってしまうのだった。そうして母を失い流されたエリンは、やがて自分自身でその禁じられた技に辿り着き、国の秘密に関わる数奇な運命に巻き込まれることになるー

 去年出た「守り人シリーズ」ではない新作、ようやく読めました~。こちらもファンタジーだけどどこか土着な世界観、アボリジニの言葉なのかそれを基にしたオリジナルなのかわからないけど独特な読みの言葉たちにまずはぐいぐい引き込まれますね。闘蛇のビジュアルが懐かしのスケバン刑事のあの蛇に直結したせいか、岩場で闘蛇を飼い育てる闘蛇衆の小さな村のイメージはなぜか梁山泊・笑。

 「魔がさした子」として身内からもどこか距離を置かれていたエリンが、娘の命と戒律との間で一瞬迷いを見せた母の最期の態度にも傷つきながら、蜂飼いのジョウンに育てられて、自然の姿を学んでいく前半が何といっても生き生きしてて面白かったな~。蜂を夢中で観察するところとか、ひとりでぶつぶつと考え、考えるだけじゃなくつい行動に出ちゃうところとか。エリンの知識欲や不思議を考える力が、ジョウンと暮らして一気に開花していくのがなんともたくましい。

 なんとなく上橋菜穂子の文章から想起される女の子は、例えば小野さんのサヴァサヴァした女子と比べるともっと「少女」っぽいイメージがあるんだけど(野生育ちゆえの純粋さみたいな)、これが意外と中身は一筋縄じゃいかないのよね(やっぱりバルサを生んだひとだわ~)。エリンも一見内気そうなのに、頑固で決してただ流されていかないような、硬いものを内に秘めてるところに何度もハッとさせられました。そして、だからこそこの物語は後半ああいう方向に進んだんだな…って。

 幼い頃に出会い惹かれてやまない「野生の王獣」と、王国で飼われている「真王の王獣」との違い。それを知るエリンが一頭の傷ついた王獣と心を通わせ、本来の姿を取り戻させたことで王国に争いを呼び起こす。ただ生き物を野生のまま在るように存在させたいエリンの願いが、国に失われていた何かを取り戻し幸せになれるんだったら全く違う爽快な話になっただろうけど、段々暗雲立ち込めてくるので苦しくなってきたよ…。だって、段々明らかになってくるのは、どんな道を通っても結局我欲から滅びへと向かってしまう人間というものへの絶望と虚無感だから。一方、通じ合えたと言っても根本的に生物としての在り方が違う、人と獣の相容れなさだったり、厳しいけれど確かにそれが自然界であり人間なんだ、と粛然とするのよね~~こういうことをとことん突き詰めて描くってすごいよ…。

 過去の悲劇が最期まで隠されてることや、時々全てが終わってしまってから振り返っているような視点が混じるのも、悲劇が先に待ってるような冷やっとする感触があってね…読みながらドキドキしたよ~だってエリンの心が段々冷えていくのが分かるし。ど、どうなるの…?と…。終章直前のエリンの心の寒いこと暗いこと…

 悲劇を繰り返さないために過去の人々が選んだ道と、娘の命を救うことを躊躇わせる戒律や自然の姿を歪めて獣を縛ることを憎むエリンと、どちらが最善なのか簡単に答えがでることじゃないし、結局ただその人の信じたように生きるしかないよなと思う。知りたかった「生き物の性」の果てにあるのは、唯一の真理なんかじゃきっとないんでしょう。エリンも結局いろんな想いに引き裂かれつつ最後の選択をしたわけで。その図もまた描いた希望に比べてあまりに凄惨ではありますが、虚しさだけじゃないものが残ってホッとしましたです。人と獣であれ、人同士であれ、完全に分かり合えることなどあるはずがなく。だからこそこういう何かが通じたと思える瞬間が大事なのだ。それで十分じゃん…て気がします。はい。

 これ下界の混乱が急速に遠くなったけど、シリーズ化…じゃないよね?多分。なんかこのままひっそり人知れぬ土地に行ってしまったような気がします。下界では神が人になって新しい時代がはじまるし、やがて神話になってしまいそうなラストだなーと思うのですがどうでしょうね。

 それにしても、最初は王獣舎の先輩トムラ、次は王の盾のイアルと、いい感じvの男子もいたのに全然恋愛になりませんでしたね~~。

獣の奏者 I 闘蛇編 獣の奏者 II 王獣編 上橋菜穂子(講談社)
novel | 上橋菜穂子
CM:0 | TB:0 |
神の守り人 来訪編/帰還編  [Edit]
2006-08-31 Thu
 薬草の買い付けにロタ王国との国境付近に出かけたバルサとタンダが出会ったのは、奴隷商人に連れられた幼い兄妹だった。放っておけずに助けようとしたバルサだが、妹から発せられたすさまじい力が奴隷商人たちを切り裂き、兄にもバルサにも傷を負わせてしまう。妹・アスラからただよう死のにおいに、バルサが関わることを恐れるタンダだが、自分の過去とアスラを重ね合わせるバルサはアスラを連れて逃げることを選ぶー。しかしアスラの力はロタ王国の根源に関わるものであり、またこれからのロタを大きく変えかねないものだった…

 「虚空の旅人」でロタ王はチャグムと会ってるわけですが、その前後のロタ王国の物語がまず一つ。タルシュ帝国は北の大陸への足がかりとして直接ロタにも手を伸ばしていて、裕福な南部の大領主たちと北部の貧しい氏族たちとの間には大きな溝がある。そしてロタにもヨゴやカンバルと同じように建国の神話があり、影になって王家に仕える者たちと、かつて荒ぶる神を封じて以後決して国の表に出ないことを誓って陰の中で生きるタルの民たちがいる。封印が解かれアスラに荒ぶる神が宿ったことで、ロタの屋根骨を揺るがそうとする勢力が動き出す、と。

 この中心になるのが王家の「猟犬」として影に生きながら、現状に不満を持ちこの国のあり方を変えようとする若い勢力だけど、結局これはひとまず失敗し、火種を残したまま一応の収束という感じでしょうか。うーむ、シハナにもいい国を造りたいという気持ちはあるんでしょうが、チェス盤を眺めるような視点があんまり好きじゃないんだよな~ハートが感じられません。その点ロタ王とその弟イーハンは出番は多くないけど国を思う気持ちや人を思う気持ちがきちんと伝わってすごい立ってたので、この後のロタの話は是非彼らの視点から読みたいものです。国の中も外も嵐だけど、これをどう乗り切っていくのか…。ロタ王の健康がちょい心配ですが、一人で国を背負うのは辛いですから。この国は兄弟タッグで行ってくれるといいなあ。

 というわけでロタ国内のごたごたはとりあえず置いておいて、メインとなるのは「神」とひとつになってしまったアスラと、そしてやっぱり主役はバルサなんだよな。バルサの「生」の捉え方がこの話の心臓だと思う。いろんな立場の人がいて、背負うものも違えば守るべきものも違う。だからどれが正しくどれが間違っているとは言えないのが人の世だけど、その中でバルサは常に「自分として立つこと」を基準としてる。その姿に何より力づけられます。自分のために友を殺しつづけたジグロの痛みを背負い、自分の中の獣のような業と戦い、誰に否定されても自分を否定しないで生きること。バルサの言葉は自分にも他人にも厳しいけど、「生」と向かい合うその姿が言葉よりも雄弁に訴えかけ、ざわざわと震え揺れる心を落ち着かせて、静かに「生」を見つめさせてくれる。

 でもそういうバルサ自身も、それは強さじゃなくてあきらめだという。平和には慣れても人生に対する思いの薄さはなかなかなくならず、生き方を知らない赤ん坊なのかもと。アスラの業も重いけど、やはりこれはバルサの物語なのだ。アスラという存在を通して、バルサがどのように生を捉え、何を守るのか。これまではただがむしゃらに命を繋いできたけれど、これから自分の人生とどう向かい合うのか…バルサの気持ちがやっぱり一番の読みどころなんだよね。

 バルサとタンダ。バルサにとってタンダは大事な人間だし、想いもあるわけだけど、でもタンダが報われるかというと…ううむ、まだ当分難しいのかなあという気が;。秋風が吹けば旅心が出るし、穏やかな生活というものに馴染めないのは性格というよりももっと深く魂に刻まれててバルサに根ざしてるしな。そしてバルサってばナチュラルに攻だし<ラヴ(?)シーン。アスラも「お父さんみたい」だし・笑

 何百年に一度訪れるというナユグの春は、この後のシリーズでも重要ファクターのような気がするけどどんな影響を与えるんでしょうかね?タルシュなどの南の大陸では、北の大陸のような「この世と平行して存在する別の世界」は全然失われてるようだし…。北の大陸に迫ってる嵐とともに、この世界観がどうなっていくのかが気になるところです。そして、順番的にはこの次の巻で流浪の人になったチャグムですが、方角的にはロタに向かってるんだっけ?次の三部作ではストーリー的にもしっかり交わってきそうでだな。早くバルサと会えますように。

神の守り人<来訪編> 神の守り人<帰還編> 上橋菜穂子(偕成社)
novel | 上橋菜穂子
CM:0 | TB:1 |
蒼路の旅人  [Edit]
2006-08-03 Thu
 この前にバルサの「守り人」シリーズが一つあるんだけど飛ばして、続けてチャグムの「旅人」シリーズを。今のところは去年刊行されたこれが最新刊なんだけど、近々続きも読めそうです。秋から「天と地の守り人」三部作が順次刊行予定とのことで、「守り人」シリーズだけどバルサとチャグムの話が交わりラストに向かっていく、一応シリーズ最終巻になる…のかな、多分?

 15才になり才気と人を惹き付ける若々しい改革の息吹を感じさせる若者に成長したチャグムだけど、反面親子関係や王宮での派閥争いは悪化。「虚空」でタルシュ帝国に攻められたサンガル王国も落ち、これまで他国との戦いと無縁だった北の大陸の国々にも嵐がやってくる。そしてチャグム自身も捕虜としてはるか南の大陸・タルシュ帝国の大きすぎる力を目の当たりにし、国と民を背負わざるを得ない嵐の中に飲み込まれていく…

 しょっぱなからシュガとも離ればなれになり、数少ない味方だった祖父をもなくしてしまうチャグムは、たった独りで嵐の中に立たされるのだ。捕虜となった最初にはかつて暗殺者として自分の命を狙ったジンが、航海の間はタルシュに征服されたヨゴ国の出身でありながら密偵として生きながらえているヒュウゴや元サンガルの海賊船の「船の魂」セナが少しは支えになってくれるけど、それでもチャグムの肩に乗っているものを誰も肩代わりしてはあげられない。最後の時がきたら、もう何に縛られることなく懐かしい異世界・ナユグへ行ってしまえると憧れ、でも逃げるなと言われればこれから嵐に呑まれるだろう祖国や民のことを考えないわけにはいかないチャグムがホントに孤独でかわいそうっした;

 そして最後に選んだ道もまた孤独…。旅人というよりももはや流浪の民だよ。でも与えられた国で王になることも、父や弟を殺すことも、民を戦に駆り出すこともチャグムが望む未来じゃないから。たとえ無謀でも今まで決して自分で自分の道を選べなかったチャグムが初めて自分で選んだ道なのだ、これは。皇子であることを捨てながら、国と民を守ること。美しく生命に満ちた水が呼ぶ声に背を向けて、血と炎の匂いに満ちたみにくい人の世を、はるかに旅していくこと…。

 王への道を捨てたチャグムだけど、この道の先には回り道して再び帝になる未来が待ってるのか?それとも辿り着くのはナユグの世界なのか?そして今は別々の道を歩いているバルサの道と交わる時がくるのか…きてほしいですねえ。それから今回出て来たヒュウゴも気になる人物です。少年時代の番外編の予定があるみたいだけど、この後どんな道を辿るのかも知りたい。この後もチャグムと関わることがあるかしら?次の三部作が待ち遠しいですー。

蒼路の旅人 上橋菜穂子(偕成社)
novel | 上橋菜穂子
CM:0 | TB:0 |
虚空の旅人  [Edit]
2006-08-03 Thu
 「守り人」シリーズ外伝…だけど、この後チャグムの物語は「旅人」シリーズとしてバルサの物語とは全く別の物語が紡がれていくことになるのですねー。

 チャグムの生まれ育った新ヨゴ皇国やバルサの故郷カンバル王国を含む北の大陸、その南端には海賊を祖に持ち、男たちの力と女たちの知恵で周辺の島々を統治する島守りを束ねる広大な海の国サンガル王国があり、海を越えてさらに南には強大な国力と武力を持った諸国が争いを続けている南の大陸が広がっているという。14才になったチャグムはサンガル王国の王位継承式に皇太子として出席するためにはじめてその「世界」に触れることになるのだけど、そこでは南の大陸の大国・タルシュ帝国が北の大陸を攻める足がかりとしてサンガルを攻めようと動いていた…

 サンガルにも「守り人」シリーズと同じようにこの世界と重なって存在する別の世界があり、そこに魂を引かれた少女と、彼女を通してかつてその身に宿した異世界との間で再び揺れるチャグムが一つの物語ではあったんだけど、むしろチャグムのシリーズの「世界」とは国々で構成されるこちら側の世界に大きく傾いていくみたい。バルサのシリーズは、目に見える世界と見えない異界との繋がりと、その中に居場所を定めて自分という人間を実現しようとする個人の物語だったけど、チャグムは個人としては生きられないんだもんね。皇太子としてやらなければいけないことと、そのために切り捨てなければいけないものとの間で葛藤する、国と民を背負った少年の物語になっていくのかな。

 「旅人」ってむしろバルサに相応しいような気がしてたけど、読んで納得。確かにチャグムはこれから世界に旅立っていくんだわ。はじめて触れた外国の為政者の姿、外から見るあまりにも小さな自国の姿は、まだ14才で父帝に疎まれ、王家の中の後継者争いから暗殺の危険も常に身に負っているチャグム自身の寄る辺なさと相まって、とてもとても堂々たる船出とはいかないけれど、国のために民が駒のように死なないで済むような王になりたいという思いがチャグムの中に確かに芽生えた旅立ちなのだ。自分で言うようにそれはとても幼くあやうい資質だけれど…そんなチャグムだからこそできる何かがあるんだと思う。

 バルサたちは王宮でのチャグムになにもしてあげられないし、味方といえるのはシュガくらい。だから今回サンガルの王子・タルサンとの友情はホッとするものだったんだけどね~。バルサと関わりの深い「王の槍」たちとも誼を結べそうだったし、北の小国の皇子にすぎなかったチャグムの世界が広がって、王や国の論理を超えた為政者へと成長していくのかなと思える予感になんともわくわくしたんですが。…えええっまさかこうなっていくとは<シリーズ次巻。タルサンとも再び会えることはあるんだろうか…無事でいろよー。

虚空の旅人 上橋菜穂子(偕成社)
novel | 上橋菜穂子
CM:0 | TB:1 |
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