読書の欠片ネタバレあり
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なまくら  [Edit]
2005-09-29 Thu
 佐藤真紀子のイラストで手に取った本(正直者)。児童文学の雑誌と同人に掲載されたものを加筆してまとめたものみたいです。江戸末期から明治初め頃の京を舞台に市井の少年を描いた短編集で、あんまり読んだことのないような切り口がなかなか面白かったです~。

 倒れた父親の代わりに大阪から京都まで生魚をてんびん棒で担いで運ぶ「走り」の夏吉(「つ」の字)、砥石の運び人というキツイ仕事に嫌気が差して逃げだそうとする矢吉(なまくら)、盗んだ灰を売ろうとした染物屋に道を外すところを救われる末吉(灰)、いかさまバクチの仲間から足を洗おうとする風吉(チョボイチ)、廃刀令で没落した刀鍛冶の息子時代を懐かしみながら車引きをしている長吉(車引き)、西南戦争の徴兵から逃げてきた兄を北海道へと逃がす小吉(赤い番がさ)、住み込んでいたレンガ製造所からお目見え盗をして逃げようとしていた正吉(どろん)。まだ13~15才くらいの少年ながら、親の後ろ盾がなかったり貧しかったりして子供ではいられない彼らは、自分の食いぶちは自分で稼がないといけないのだ。

 この「働く」ってのが短編集通してテーマになってるみたいですね~。親が倒れたり没落したりして慣れない仕事をはじめたり、キツイ仕事から逃げ出して楽な方へ流れようとしたり。その姿はたくましいというよりまだまだ心許ない。ただ日々の暮らしに精一杯で、先が見えないことに不安になり、時にはその重さに負けてしまいそうになる姿は、時代ものながら現代に通じるものがありますな。

 だけどどの短編も、働くことがどう生きるかってことに繋がっていくのがいい。ごく短い話ばかりだけど、まだ何も持っていない彼らが大人の差し伸べてくれた手や一生懸命生きてる姿に、ほんの少し未来の自分を重ね合わせて最初の一歩を踏み出せるようになる話なんだよね^^。何のために働くのか…それは多分メシを食うためだけじゃなく。自分の道を拓いた先には、きっともっと強くてやさしい自分が待ってるんだと思う。なりたい自分の姿がかすかにみえて、どの目にも希望があるのです。

 好きなのはー、今度こそきっと辛抱しようと決めてもつい嫌気虫に負けてしまうあたりが情けなくて共感できる(え)「なまくら」、勝手だった父親のとった行動にようやく絆が生まれる「チョボイチ」、守銭奴のばあちゃんがナイスな(笑)「赤い番がさ」とかかな~。「灰」の愛染明王そっくりの怖顔職人と「どろん」の世話女房(4才ですが…)花ちゃんもいいな。少年たちもだけど、それぞれに道を示してくれる大人たちもいい味出しておりました。

 なまくら 吉橋 通夫(講談社YA! ENTERTAINMENT)
novel | 吉橋通夫
CM:0 | TB:0 |
| 日々是好日 |
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