読書の欠片ネタバレあり
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大地の子 全4巻  [Edit]
2007-02-01 Thu
 ずっと前から読みたいと思ってた山崎豊子にようやく手をつけることができました。自分の中で機が熟しただけで別にカレー(華麗)効果じゃないっすよ・笑。まずは一番気になってた「大地の子」、あと「沈まぬ太陽」「二つの祖国」「白い巨塔」かな。「華麗なる一族」は金融鉄鋼業界の内部にこの筆で斬り込んでいってるんならドラマよりか面白そうかな~と思いつつ保留。

 上川隆也のドラマも気になりつつ観なかったんで、中国が舞台という他は全く白紙の状態で読み始め…いきなりガツンと喰らいました。文革時代を描いた小説にはこれまでも衝撃を受けてきたけれど、現実の持つ重みに圧倒されてしまって…。これが噂に聞く山崎豊子の取材小説なのね。小説だけど余計な装飾のない「事実」に、確かに現実に起こったことなのだ…という身近な現実感が読んでる間中側にあったような気がする。

 終戦時、満州開拓団は開拓地を放棄して逃げる途中、関東軍がすでに開拓民を置き去りに撤退したことを知る。体のいい棄民政策として日本政府主導で送り出され、今また国に棄てられた彼らは、終戦も知らされずそのほとんどが無残な死を遂げ、生き残った者たちは侵略・虐殺の恨みを抱えてきた中国人社会の底辺で生き延びるしかなかったー
 そんな中たまたま小学校の教師夫婦に拾われ彼らの子として育てられた陸一心は、内戦の嵐や日本人という出自ゆえの差別にあいながらも長じて技術者として職を得る。しかしその頃から吹き荒れた文革によって、労働改造所へと送られるのだった…

 この一巻に描かれたことには言葉もない。ただ「現実なんだ」という思いに憑かれるように読んだ…。ただひとりの日本人に起こった悲劇ではなく、そこには日本という国の現実、中国という国の現実、さまざまな背景を背負った人々の考え方や感じ方が描かれている。「中国」とひとくくりにできない雑多さがあり、日本とは別の思想・歴史を持っていることが分かる背景がある。日本人にとって悲劇であったと同様、中国人に日本人がしたことも描かれている。外から眺めるんじゃなく中国という社会に深く入り込んでいなければ描けないようなその時代・国・人は、とても小説として再構築というクッションがあったと思えない、ノンフィクションの重みがそのまま伝わってくるようでした。

 育ての父親との絆によって死の淵から生還してからは、中国初の巨大製鉄所建設プロジェクトに関わり、不安定な政局や出自ゆえの苦労に翻弄されながら、物語はやがて実の父親との再会へと動いていく。ここでも中国人と日本人のそれぞれの背景が浮き彫りになってることで、どちら側からっていうんじゃなく全体を見ることができたような気がする。長い文革を経て弱りきっている中方と、戦後30年で復興を遂げすでに国内での製鉄需要は飽和状態の日方とのやりとりは、交渉から建設からすべてにおいて困難を極めるのだけど、そんな中でも人間としての関わりにはやっぱり普遍的なところがあり、また日本側のある年代に「贖罪」という気持ちがあったのには救われた気分。

 実は一心の少年時代の現実と「中国残留孤児」という言葉が結びついたのは、ずいぶん後のことでした。物語の半ば、孤児を探す運動が起こってからようやく、ただ置き去りにされたんじゃないこと、そうした人たちが生まれた背景とどんな過酷な中で生きてきたのかを知ったのでした…。テレビのニュースで肉親探しにきたひとたちを見、新聞の解説欄を読んだところで、決して想像つくものじゃないと思う。少し前に読んだ浅田次郎の「地下鉄に乗って」でも満州へ出兵した父親視点で、置き去りにされた開拓団を描いたシーンがあったけれども、それもやっとこういうことだったのか…と、知らなかった自分に呆然としてしまったよ…

 一心の人生を軸にした父と子の絆、日本人の血と中国人として培われた生き方とに揺れる心情に大きく揺さぶられつつ、それにも増して、日本であれ中国であれ国家(戦争)に翻弄され、踏みにじられた人々の現実と、それぞれの生きる姿が強く残りました…。それから国としての背景、それに拠って立つ国民性も。特に幼い一心に義父が言った言葉「中国では戦乱のたびに民は逃げ惑わねばならないが、平時になればまた元に戻って暮らせるのだ。目先の物事に固執せず、長い目でみてものを見なければ…」には中国らしい大きさとたくましさがありましたねえ。日本も戦国時代の民はこんな感じだったような気がしますが。今は目先ばっかだもんな;

大地の子〈1〉 大地の子〈2〉 大地の子〈3〉 大地の子〈4〉 山崎豊子(文春文庫)

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 くしくも読み終わった翌日、新聞に東京地裁で中国残留孤児の訴えが全面敗訴で退けられた記事が載りました。「国に義務はない」って…それを聞いた(訴えられた側の)厚生労働省が「ほっとした」って……絶句。これを読め(怒)。この問題に限った話じゃないけれど、平気で切り捨てて切り捨てられた方の痛みをこれっぽっちも省みない体質には真っ暗になるわ…。国民を人間としてみるのって、国の在り方としてそんなに相容れないことなの?支援を指示した某首相だけど、実際の行動にも注目したいと思います…。
コメントを読む(4)
気になりつつも  by いわし
未読なのでした……。
ドラマ、いいですよ!
わたしも…  by banri
ドラマ観るわ~~!
ドラマでは一巻あたりの部分はだいぶソフト(?)に描かれてたと聞いたけど父子関係が軸なのかな。
原作は個人の物語では終わらないような感じっした。
そうですねぇ  by いわし
やっぱり養父が泣かせた記憶が……でもけっこう歴史を考えさせる内容だったと思います。まぁだいぶ昔なので忘れちゃってますし、原作未読のせいもあるかと思いますが、大作・名作ドラマだと思います。
上川隆也もあれのおかげで売れちゃったよな~。最初モックンという案もあったとか。カッコよすぎですよね、それじゃ。
無名っぽさとか、カッコよすぎないところとか、キャラに合っててよかったと思います(誉めてるのか?)。

ドラマといえば、『百鬼夜行抄』もなるんですね……。
義父は  by banri
中国の人間国宝なのね…!
上川隆也は原作読んだ後でもイメージ合いますね。モックンはちがうとおもいます・笑

百鬼夜行抄のドラマ化は知らなかったわ~~。
ちょうど始まったところなんすね。
司ちゃんの見かけは似てるかも?
妖魔とか尾白尾黒とかど~すんだろ~。
評判聞いてから、DVD見るかきめようっと・笑。
novel | 山崎豊子
CM:4 | TB:0 |
| 日々是好日 |
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