読書の欠片ネタバレあり
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下妻物語  [Edit]
2007-01-07 Sun
 先に映画から観ちゃいました。評判のいい映画だったと思うんですが確かに。ふかきょんと土屋アンナはすごく自然にはまってて可愛かったですね~最後桃子がヤンキーな啖呵を飛ばし、イチゴが超美少女なロリータファッションを披露して逆転するところがあるんだけどそれもはまってた。あの設定で車にぶつかってぶっ飛んでいくとこもあるのに漫画ちっくじゃなくて下妻の田舎風景にフツーに溶け込んでた映像もよかったしね。篠原涼子はやっぱりいい~あとレディース総長が小池栄子ちゃんだったのに笑ってしまったわ。

 さて以前から読んでみたかった嶽本野ばらですがこれが初。映画から入ったせいもあって文体にもすぐに慣れ、桃子とイチゴのキャラもほぼ映画通りで(いや映画が原作通りなんですが)、最初は映画と原作を二重写しで見てるような感じだったんですが、そこはさすがに原作。私は作者のエッセイも読んだことないし、生まれ育ちも生き方も知らないのだけど、見た目と乙女のカリスマという肩書きから独自のポジションに周囲の目を跳ね除けて立ってるんだろうなーと想像はするわけで、そういう作者の立ち方やポリシーがね、原作の桃子にはもっとストレートに反映されてたような気がする。だからこそ原作の桃子の言葉には映画よりも重みがあるし、なんかね~その生き方に尊敬すら覚えてしまったのでした。

 ロリータな桃子とヤンキーなイチゴの友情物語だという前知識はあって、映画もそれが前面に出てたし(原作にはない磯辺社長の台詞とか)原作だってそれが物語の大筋ではあるんだけど、それ以前に桃子のロリータとしてのひいては人間としての基本姿勢と、イチゴのおかげでそれに意味が付加されるというか、とにかく変化するんじゃなくより完全な形に昇華するのに映画では味わえなかった感動があったのよね。

 友達なんか必要ないと言ってた桃子がイチゴに友情を感じるようになるその気持ちにはもちろん変化はあるんだけど、誰とも支えあわないで自分一人で立つというハードボイルドな人生観は変わらない。可愛いものを愛す甘い外見にゴツゴツした心を持ち続ける女の子なのだ。「何故たかがお洋服に自分の全てを託してはいけないのですか」「自分の見つけ出した価値観を尊重せずしてなんになるというのでしょう」「自分にとって大事なものは絶対に貸さないし、貸してもいいものは戻ってこないことを覚悟で貸す、だから借りたものも返さない主義なの」…特異な、不遜なほどの言い回しや基本姿勢が、映画で観ていた時よりも逞しく潔く響いてくる。世間の目や不理解を恐れず、自分自身を貫こうという断固とした意思がキモチいい。

 イチゴが桃子の側が居心地がいいと感じるのもその姿勢のせいだと思う。映画では微妙に違うんだけど、淡い恋に失恋したイチゴに何も言わない桃子もカッコよかったな。「ありきたりの言葉で心の痛みは紛らわせてはいけない」のだ。自分も一人で立ちたいからこそ、自分自身と戦おうとしてるイチゴに安易に手を差し伸べない。そしてそんなゴツゴツした心を忘れたくないとヤンキー道をひた走るイチゴだからこそ、桃子もまた何もできなくても原チャに乗って駆けつけずにはいられないんだよね。

 映画にはなかった、原作の最後のイチゴの台詞が泣かすんだ。「バイクは修理して返せても、お前が駆けつけてくれた想いは返せない」「否、返したくないよ、だってそれはあたいの宝物だからな」…「借りは返さない主義」だという桃子の基本姿勢が、ここで見事に昇華するのだ。うん、他人からもらった想いは借りなんかじゃない。借りだと思っちゃいけないんだよな。桃子もイチゴからもらった想いを返さない、それは元々の主義にプラスの付加価値を付けて、孤高であっても孤独ではない生き方になるのだ。

 桃子の変化の一つ、刺繍の腕前を愛するメゾンの社長さんに見込まれて湧き出るようにイメージを語り不眠不休で形にするところ、イチゴの胸の刺繍を請け負うところは映画でも原作でも面白くってワクワクしたんだけど、社長さんから桃子のお洋服に対する愛情が着る人を幸せにすると太鼓判を押されて、自分でも誰かに使われるために刺繍する悦びを知りながらも、贅沢な主義を全うしようとするのも鮮やかだったわ。うん、これはロリータちゃんとヤンキーちゃんの友情ものに終わらない。桃子の立ち姿、貫こうとする生き方にこそ作者の魂入ってて、見かけ以上のパンチ力がありましたよ。

下妻物語?ヤンキーちゃんとロリータちゃん 嶽本野ばら(小学館文庫)
novel | 嶽本野ばら
CM:0 | TB:0 |
| 日々是好日 |
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