読書の欠片ネタバレあり
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黒と茶の幻想 上・下  [Edit]
2006-06-07 Wed
 単行本の時からタイトルからして好みそうだとわくわくしてたのだけど、文庫化でようやく読了。おお~これぞまさしく恩田節!おまけに文庫化までの年月を経て計ったように同年代な考え方や感じ方に同化して、くらくらと眩暈を感じつつ一気読みしてしまいました。

 久しぶりに会った学生時代の友人たち。大学卒業から十数年、それぞれに家庭も持ち普段は近くにいるわけではなくても、会えば変わらないポジションで付き合いが続いていた4人の男女の、ふとしたきっかけで実現したY島への旅行…それは美しい謎と過去への思索の旅だった…

 とにかく4人の男女が順番に語り手になってただ話をしながら歩くだけなんだけど、恩田陸が書くとなんでこんなに魅力的なんでしょう。屋久島を思わせる森は語り手にもよっていろんな表情を見せ、日常と非日常を行ったり来たりする。4人の人間関係も過去に付き合っていた利枝子と蒔生を軸に、彰彦(好きだv)と節子がそれに時に近く時に適度な距離を置いて関って、それぞれの視線が複雑に交差し合う。この人間関係がも一つの大きなポイントだなあ~。例えば「木曜組曲」は信頼関係の薄い4人の女性、「ネバーランド」は自分たちのポジションを手探りで構築していく4人の男子高校生、「夜ピク」は義兄姉を中心としてそれぞれの友人同士の4人がメインだし…あれっ考えてみると「小夜子」もメインは4人だし、恩田陸って4人とか4章とか多いかも?

 …っとそれはともかく、この人間関係によって「会話劇」の持つ雰囲気もがらりと変わるのよね。30代も後半に差し掛かった気の置けない友人で、これまでの人生の中で「自分」を出して深く関れる特別なポジションにいる人間同士。もちろんその中には複雑な思いも含まれているけれど、根っこのところで信頼と理解があってお互いを好きなのだ。そんな4人で構成されるこの「会話劇」には、日々いろんなものと戦ってる大人がガードを外して付き合える気安さとか自分が築いてきたポジションを楽しむ心地よさがあり、そして学生時代には見えなかったものが今だからこそ見えてきたり話せるようになったりする発見と、それをまたそれぞれの中に納めて現実へと戻っていく安定感がある。おしゃべりと妄想は恩田陸の得意ワザだけど、ベースになる人間関係でこれだけ味わいの違う作品が生まれるってすごいよなあ~。

 一応メインの謎はあるけれど、それ以外に次からつぎへと皿に載って現れる「美しい謎」がどれも美味しくって。そしてそこから連鎖するように浮かび上がる過去の思いと現在の自分とが混然となるまさに思索の旅。そこで交わされるそれぞれの人生観や恋愛観、人間観察が思わず頷いてしまうほど鋭いのよねえ~。「こんな感じ」という曖昧なことをなんてうまく言葉にするんだろう。それからこの精神の若さ。まさに自分と同年代の彼らの自負や揺らぎや普段は見せない部分で抱えてる青さが~~ほっとするくらい近くて、うん自分もまだまだと思ったり・笑。あああと、恩田陸がこれまで書いたりこれから書いたりするような物語のある風景がところどころにフラッシュバックするのも贅沢だったわ~。

黒と茶の幻想 (上) 黒と茶の幻想 (下) 恩田陸(講談社文庫)

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 そうそう、続けて読んだ「きいろいゾウ」とこの「黒と茶」。共通項は色…ではなく500円玉貯金…。私も始めようかな…笑
novel | 恩田陸
CM:0 | TB:0 |
ネクロポリス 上・下  [Edit]
2006-01-31 Tue
 年に一度、ヒガンと呼ばれる時期にアナザー・ヒルには「お客さん」が訪れる。日本と同じく長くイギリス領土だった島国「V.ファー」…独立した日本と違って今もイギリスの一部ではあるが、そこにはイギリスと日本の民俗や宗教がさらに古い先住のものと混じり合って独特の文化を形成している。その最たるものが死者との逢瀬ーアナザー・ヒルへの巡礼なのだ。そこでは死者は、生きていた時の姿で現れて生者と交わる。なるほどネクロポリス…「死者の町」ね。それはV.ファーの人々にとってお祭りであり「日常」でもあるのだ。

 確かに異国の風景なのにどこか日本的なものが溶け込んでるこの不思議に懐かしい雰囲気は魅力的よね。舞台といい、そして切り裂きジャック、境界上の殺人と、推理することが国民性のようなV.ファー気質に、序盤のミステリ色が強い雰囲気にもワクワクしたんだけど…

 …上下巻長い(オイ)。いろんな不可思議で意味あり気なことが起こり、アナザー・ヒル独特の空気は十分感じるもなかなか全体像が見えてこない。まあ、何が起こっててもどこかのんきにお酒とおしゃべりに興じるとこがとっても恩田さんらしいけどね(笑)。でもその度にこっちも一緒になってまあいっかとか思ってしまって、何が問題なのかイマイチ切迫感が…あと登場人物が多いんで、誰かを中心に読んでいけなかったせいもあるかな。

 そうだなーメイン組(教授とか本当はもっと強烈なハズの三人の女性たち)にはもうちょい活躍してほしかったかな~。主役のジュンはあくまで記録係って感じで基本的に受け身だし。魅力的だったのは、何と言っても「黒婦人」とその死んだ五番目の夫トーマス。リンデ vs 黒婦人とか見たかった(笑)。ラインマンももちろん印象的だったけど、超然とした存在かと思ってたら意外とフツーの人だった…シスコン…<殴

 それでもラストには何となくそれぞれの点がちゃんと繋がって一つの物語だったんだなーと思えたけど(ガッチとか百物語はちょいと余った気はするが)…そして恩田さんの物語ではいつもジャンルあんまり関係ないけど…後半SFになってちょい置いていかれたような(爆)。いや、振り返ってみれば最初からSFだったんだろうけど…ううむ。「お客さん」はオウケイなのに「融合」はダメなんだな、自分。その辺に自分的リアルさの境界線があるようです。そしてラストはホラーオチ?…ジミー…結局本当はどういう人間だったのか分からんかった…

 むしろSF・ホラー路線よりアナザー・ヒルとその先住民族のはじまりの物語の方が面白そうだったけど、ジュンの独り言で終わったのがとってつけたようで残念だったな~と。

ネクロポリス 上 ネクロポリス 下 恩田陸(朝日新聞社)
コメントを読む(2)
  by june
こんにちわ。
残りページが少ないのに、ラストはどうおさまるんだろう・・と心配していたら、なんとそういう手があったのか!と、驚くというかがっくりというか・・。
「融合」・・微妙です。
>juneさん  by banri
こんばんは、コメントありがとうございます。あはは、ほぼ同じような感想です~。
私もラスト近くジュンが示唆した可能性の方が魅力的だったのにな~と思ってしまいました。
…というか、アナザーヒルにはすごく惹かれるものがありますよね。
novel | 恩田陸
CM:2 | TB:3 |
My Best Books!【恩田陸】  [Edit]
2005-08-27 Sat
 My Best Books!さん(主催:トラキチさん)のマイベスト恩田陸投票に参加します^^

 普段順位とかあまり考えない方なので、改めてベスト3は?と聞かれるとう~んと考え込んでしまうんですが、この機会に自分の中の好き度を比べてみるのもいいかと思い。昔読んだ本の読後感なんぞをごそごそ掘り出しておりました(笑)

 とは言え図書館に行くようになるまでは文庫待ちしてたもので未読もかなり;「黒と茶の幻想」「劫尽童女(積読)」「ロミオとロミオは永遠に」「ねじの回転」「蛇行する川のほとり」「まひるの月を追いかけて」「クレオパトラの夢」「MAZE(積読)」「黄昏の百合の骨」「禁じられた楽園」「Q&A」「夏の名残りの薔薇」…出すの早すぎ><

 というわけで上記以外の中から選んだ恩田陸 My Best 3


1位:六番目の小夜子
六番目の小夜子 →感想

2位:夜のピクニック
夜のピクニック →感想

3位:ネバーランド
ネバーランド →感想


 …ってオール高校生モノかいっ(裏拳ツッコミ)うわっしかも感想どっちにも「眩しいよーう><」とか書いてるし(恥ず…爆)。いや、ホントはさ、高校生モノから一つ選んで、あと先日読み返したらやっぱりしみじみよかった「光の帝国」と、本好きの魂を揺さぶる恩田節が堪能できる「三月は深き紅の淵を」も入れたかった!でも…どーしても一つに絞れなかったのよ~~一口に高校生モノと言ってもそれぞれ違った味わいと魅力があってさ;う…取りあえず今回はこれで。

 1位と2位は入れ替えてもいいくらい差はないんですが、やっぱり最初の衝撃度の高さと、クラクラするような文章の力を味あわせてくれた「小夜子」に入れておきます。これは新潮文庫(ファンタジーノベルシリーズ)→ハードカバー→新潮文庫という変わった変遷を辿ったんですが(当時いかに評判になったかが分かるでしょー)、確かニフで評判を聞いて探してた頃すでに最初の文庫は絶版だか品切れだかで入手困難になってて、ちょうど単行本になったのを文庫派の自分にしては珍しく即買ったんでした。でも随分経ってから古本屋で秋里和国イラストのファンタジーノベル版(レア)を見つけた時も迷わず保護…それくらい思い入れ、あります。そうそう、いつだったかNHKでドラマ版一挙放送したのも何気なく観始めたら面白くって最後まで観たっけ。山田孝之くんの秋が大人びた感じが出てて良かったんだよな~v

 「夜ピク」「ネバーランド」は恩田陸の描く高校生が好きっていうのが見事に反映されてるな…あ、あと「閉ざされた空間」モノで「今この時だけの時間」モノでもあり。恩田陸が筆一本で創り出すこの空間と時間が好き。そんで扉が開きそこからゆるゆると出て新しい世界へ歩き始める後ろ姿がいいんだよなあ~^^
コメントを読む(2)
  by まめころりん
はじめまして(´ー`)ノ
私も恩田陸さんだーい好きです!
このベスト3作るのっていいですね・・でもたくさんあるから
すごく迷いそうです 夜のピクニックは勧めたら小学5年生の
娘も読んで とても面白かったそうです
夏休みの読書感想文もピクニックにしたんですよ(●'艸)ンププ

また遊びにこさせてくださいね!
>まめころりんさん  by banri
こんばんは。
恩田さんのベスト3出ましたが夜のピクニック強しでしたね。
何の仕掛けもないのにこれだけ特別な感じがするのがすごいな~と思います^^
娘さんも読まれたのですか。言われてみれば自分も小学生の時にマンガやなんかで高校生生活をかいま見たような気がするので、小学生にも十分訴えるものがあるのかもしれないですね~。
novel | 恩田陸
CM:2 | TB:2 |
図書館の海  [Edit]
2005-08-18 Thu
 予告編コレクションのような本と解説にあったけど、どれも短編としてストンと落ちてるような気がする。どうなるのか?!待て次号!的に広げて終わるんじゃなく、ゆるやかに閉じつつ道が先にずっと続いてる感じ。私はこの「道が続いてるような」読後感ってのがすごく好きで、だから放り出されたような不安感がないんだろうなあ恩田陸の物語は。道の先がほの明るく見えるものなら尚好みv

 ホラーありミステリありSFあり、今まで書かれた長編の前日譚的な話ありの10編。悪意と言うにはドロドロしてなくて、うっかりふらふら近寄ってしまいそうな「茶色の小壜」「国境の南」は、どっちかと言えばホラー苦手な私でもオウケイというか、適度にひんやりした冷たさが夏向けでよかった(オイ)。「春よ、こい」は映像的でようやく閉じた輪廻の輪が爽やか。「オデュッセイア」も絵本みたいでなんかいいなあ~^^。動く九龍城ってそのイメージだけでワクワクする。

 お気に入りはやはりというか「ピクニックの準備」「図書館の海」。ピクニック~の方は「夜のピクニック」で少し設定変わってるっぽいけど私は実際書かれたのでかなーり満足^^。そして前日の融と貴子の様子、これだけでこんなにぎゅんぎゅんするんだもんな~v。「図書館の海」は「六番目の小夜子」の秋くんの姉、夏の高校時代。海に浮かぶ帆船のような図書館…うっとり(笑)。これもやっぱり何でもない話、何も起こらない話なんだけどちょっとした感情の揺れにドキドキする。いいなあ^^

図書室の海 恩田陸(新潮文庫)
コメントを読む(4)
ご無沙汰しています  by ざれこ
こんにちは。
ゆるやかに閉じつつ道が先にずっと続いてる感じ、ってなんかすごいわかります。
恩田さんの本はそういう読後感が多いですよね。未消化な部分もありますけど、先への道を想像していい気分になることが多いです。ステキな短編集でしたね。
>ざれこさん  by banri
こんばんは、コメントありがとうございます^^
私も恩田さんの作品は解かれない謎が残ったりしても何故か満足してしまうことが多いんですよね。
日常と非日常が隣り合わせの雰囲気とか文体を味わってる時点でかなり幸せだからかもしれません~
こんばんわ  by june
banriさん、こんばんわ
私も「ゆるやかに閉じつつ道が先にずっと続いてる感じ」というのを読んで、そうそう!そうなのよーその感じ!と思いました。
恩田さんの、とかれない謎がそのまま残ったり、余韻を残しつつ終わる感じが好きです。
そしてそこから始まる予感があるのが、またうれしいです。
>juneさん  by banri
こんにちは、出掛けてたものでレス遅くなってすみません~。
コメントありがとうございます。
恩田さんの文章には何ともいえない空間や雰囲気を作り出す魔力がありますよね。
何かが起こりそうな予感にいつも惹かれます~^^
novel | 恩田陸
CM:4 | TB:3 |
蒲公英草紙ー常野物語  [Edit]
2005-08-14 Sun
 「光の帝国」の続編、しかも長編ってことであそこで語られた話の中のどれかの続きかな?と思ったんだけど違いましたね。まだ語られていなかった明治時代、東北のある村で「大きな引き出し」春田家が会うべき人に出会った話でした。「しまう」という能力は数ある常野の能力の中でも最も常野らしく最もその役割が掴みにくいと思うんだけど、どんな能力の常野でも一つ共通して言えるのは、「出来るのだからやる」という姿勢でしょうか。なぜそんな力があるのか、なぜ出会ったのか、彼らはその答えを求めているわけじゃないけれど、ただそのように生き、繋げていってくれる存在が在るということが世界にとって救いのなのかもしれない。

 最近どうもこの辺の時代に弱いというか惹かれるんだけど、それは日本や世界がおかしくなっていく空気を感じつつもそこで生きる人が持ってる「大事なもの」が胸をしめつけるからだと思う。失くして欲しくないもの。最後に箱の底に残っていて欲しいもの。激動の時代にあってそれを保ち続けるのは難しいけれど、常野の一族ならそれを受け取って代わりに伝えてくれるような気がするよ。
 今回は常野を外から見た物語だったから尚更そう思ったのかな?決して常野の自覚があったわけじゃないのに聡子の毅然とした態度はまさしく「光の子」という感じがして胸をうつのよね~><

 あーでも最後、その常野を見てきたハズの峰子から「希望」を感じられなかったのが淋しいといえば淋しかったな。「光の帝国」にはどれも希望があったので…。廣隆さまともあれっきり?!二人が聡子や春田家を覚えていれば、それだけで希望になるような気がするけどな~><。峰子が終戦後に感じた「未来の見えなさ」ーこれから価値のある国を作っていけるのかどうかーってまさに現代じゃん…今こそ心を残してくれる人が必要なんだってばよ;

 ところで蒲公英~を読んだ後思わず「光の帝国」も再読してしまったんだけど、なんかすげーよかった。希望が感じられるってのもあるけど、何より「常野」側から描いた物語なだけに、ただ穏やかであるがままなだけじゃなく、常野であるが故の苦しみとか淋しさとか受け容れ難さみたいなものがあってこうぎゅうっと締め付けられるというか。初読ん時も思ったような気がするけど、岬(美咲)って名前には「御先」の意味もあるのかなあって。「NIGHT HEAD」(飯田譲治)のように進化のその先って意味とは違うけど、まだ誰も到達していないところへ心を届けてくれる、そこまでの道を繋いでくれるひとたち。それ故の孤独さとそれでも受け入れてまっすぐ立つ姿に泣けるんダ。常野ってそーいうイメージなんだよね~…このシリーズはホントまた読みたいです。とりわけ気になるのは、記実子、美耶子&篤、亜希子が出会い収束に向かっているという常野の未来ですが…書くとなると壮大な話になりそうだなあ(笑)

 さらに余談。「大きな引き出し」の小澤征爾のエピソードと「国道を降りて…」がのだめとシンクロして妙ーに楽しかったんだ…(笑)律と美咲は私のラブツヴォでしやわせだしv

蒲公英草紙?常野物語 恩田陸(集英社)
novel | 恩田陸
CM:0 | TB:0 |
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