読書の欠片ネタバレあり
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お縫い子テルミー  [Edit]
2005-09-29 Thu
 あ~なんか好きかもしんないコレ…。ひょっとして私最近すばる系?と思わなくもないこともなくて(どっち)、こーいう特別ドラマティックじゃないけどさざ波が立つような話にじ~んときてしまうんだよねえ><

 生まれてからずっと祖母や母親とともに他人の家で枕を借り、お縫い子としての腕を磨いてきたテルミーこと鈴木照美。15の時に一人で歌舞伎町に出てきた彼女はそこでシナイちゃんと出会って恋をした。だけど運命だから縫うというテルミーが好きになったシナイちゃんは、運命だから歌う人…決して叶わない恋心がどうにもならなくなったテルミーはシナイちゃんから逃げ、今は流しの仕立て屋をして暮らしているー

 も、最初のこの2ページでやられたーって感じ(笑)。ちょっと普通じゃない設定なのにするっと入り込まれた。流しという自由さと、誰かに恋をして捕らわれた心…そこに二律背反が隠れてて何とも切ない予感がするのよねえ。実際、「半分は激しく欲し、半分はだめだと理解している」テルミーの恋心はさらっと描かれてるけどそれが却って痛くて、でもそれを自分で昇華しようとする潔さに救われてもいる。あーなんかいいなあこの苦しさ。それを飲み込んで、でも背筋が伸びてる感じ。ひとを好きになって苦しさを抱え込んでてもドロドロしてないのがいーです。自分の恋心を振りかざさない、相手に要求しない…リアルじゃない?いーんです、そーいうのが好きなの(笑)。「お情けは無用です」「ナイスガッツ」とかね。決して手に入らない遠さに泣けてくるくせに、つれなくて素敵だとか言っちゃうんだ。切ない。けど清々しい。

 この作者の独特のテンポとかどっか浮世離れした会話もかなり好きみたいです私。思わずツヴォに入ったのが、勝負服を所望したお客さんのリクエスト、「ハイリスク、ハイリターン」…う~ん潔い(笑)

 表題作の他もう一編、こちらの方が長い「ABARE・DAICO」。「オテル・モル」「テルミー」どちらも女の話だったけどこれは小学生男子二人のお話。間の「・」が大事らしい(笑)。一夏の経験で一回り大きい世界を知った男子ってのは、どうしてこう外見はガキっぽいのに中身大人びるんでしょうな。「いもあらい~。ああ、いもあらい~」だの「ピンポンう○こ」だのと「やることちゃんとやってください」「甘えんな」が同居するお年頃…どちらかと言えば児童文学に近い味わいで(しかも少年の成長テーマはツヴォだv)、これもなかなか良かったな~^^

お縫い子テルミー 栗田有起(集英社)
コメントを読む(2)
こんばんわ  by june
私もこれ、好きですー。
「お縫い子テルミー」も好きだけれど、「ABARE・DAICO」が特に、思い切りツボにはまりました。

「ナイスガッツ!」密かにプライベートで使ってます(笑)。
>juneさん  by banri
こんばんは~。「オテル・モル」がなかなか気に入ったので読んでみたんですが、こちらの方がさらに好きかもしれないです^^。テルミーの潔さがかっこ良くって。「ABARE・DAICO」の料理上手な男の子はツボですよね~(笑)
novel | 栗田有起
CM:2 | TB:3 |
オテル モル  [Edit]
2005-07-20 Wed
 何だか気になるタイトル。そしてパラパラと読み始めてみたら、ビルの谷間の、身体を横にしないと通れないほどの隙間を抜けて辿り着いたオテル・ド・モル・ドルモン・ビアンが醸し出すゆったりした空間にふわりと入り込んでしまった。ので突発的に借りてきた。オテルはホテル、意訳すれば「ホテルぐっすりもぐら」…何か、いい(笑)。その名の通りこのオテルは地下にあり、安眠と快夢を求める人々が集うところなのだ。

 「何か、いい」のは薄暗くでも何だか安心できるようなオテルの雰囲気だけでなく、語り手である希里のテンポにも安心感があって居心地がいい。真面目なんだけどいい感じに抜けてて、弱気なようにみえてその実立ち止まってくよくよ考えるよりは取りあえずずんずん歩いて行っちゃうような。安眠を願う人々の一体感が悪夢を退けるホテルなんて設定、書きようによってはホラーだと思うんだけど、この話にはそういう人為的に人の感情を操作するような薄気味悪さが感じられないのも希里の語りに拠るところが大きいかもしれない。何て言うか彼女にはあるがままをそのまま包み込んで、不安や憎しみや不幸だって見方を変えれば、あるいはすぐ横をちょっと振り向けば、ホラ大丈夫と良いものに転化してくれるような力があるんだよね。

 オテルの接客精神は徹底していてその存在自体が一つの物語で面白いんだけど、それと縦横の糸になってる希里の物語の方により惹かれるものがあったなあー。薬物中毒で入院中の双子の妹・沙衣との過去、妹の代わりに育ててきた娘・美亜とその父親であり、かつて自分が好きだった西村さんとの3人の生活。一見悲惨だし、希里自身何年もずっと心に蓋をしてきたことがとうとう限界に達してのオテル勤めだったわけだけど、オテルでの眠りが蓋を開けてくれる。ありのままの現実を受け入れてたのは、諦めていたからじゃなく愛してたからだと。沙衣のことも、美亜のことも、西村さんのことも、自分にとって大切だと自覚してしまえば希里はこういう生活を続けることにもう迷わないだろうなあという気がする。せき止めてる時より動いてみた方が自分の気持ちもはっきりするし心もスッキリみたいな希里って確かに「動」だよなあー。時が解決してくれることもあるだろうし、変わっていくものもあるだろうけど、この気持ちだけは変わらないだろうという安定感がこの話の後味をいいものにしてる。

 西村さんの本心はハッキリとは語られないので謎ですが。最初読んだ時はやっぱり沙衣を愛してるんだろうと思ったけど読み返したら分からなくなった(爆)。んーできれば沙衣と美亜を愛してる方がいいかなあと思うけど、希里のことも大事なんだわね、きっと。それでも二股優柔不断男には見えないとこが結構好きかも。この人も希里と同じように、過去あったかもしれない葛藤を飲み込んで自分に手が届く世界を丸ごと大事にできるようなところがある。オテルの眠りと同じように、誰かが無理をしたり何かを犠牲にしたりすればこの生活は成り立たない。逆に皆がこの幸せな時間が少しでも長くあるようにと願う気持ちで繋がったなら、不自然なことも自然に転化する力になるかもしれないと思う。

オテルモル 栗田有起(集英社)
コメントを読む(4)
  by ざれこ
連続トラックバックでごめんなさい。
なんか、↑私が思っていて語彙が足りなくていえなかったことが
書かれていて嬉しかったです。愛があることに気付けばそれでいいんですよねー。
双子が入れ替わる夢のところは少し泣けました。なんかいい本でした。
>ざれこさん  by banri
こちらにもありがとうございます^^
私も読んだ後ざれこさんの感想読ませていただいてて、なんかいい、ってのが同じで嬉しかったです(が、まだTBに慣れてないもので…)
もしかしたらもっと苦い感情もあったかもしれないけど、それを表に出すほど自分本位になれない希里の性格が却って胸にせまったというか。
自分を可哀想だと思う方が簡単だろうけど、もしそういうキャラの語りだったら私きっと苦手だっただろうな~。
双子の持つ、片割れ的なすごい近い感覚もよかったのです^^
はじめまして  by やまを
なにも言わない西村は見方を変えれば卑怯な男になりかねないし、希里だって自分を惨めに思い嫉妬とかに取り付かれたかもしれないだろうに、そういうふうに持っていかないのがとても良かったです。
オテルに一度泊まってみたいものです。私はどんな夢がみられるんだろう。
トラックバックさせていただきました。
>やまをさん  by banri
はじめまして、コメントありがとうございます^^
西村さんはホントずるい男だと思われても仕方のない立場なのに、私もなぜかそうは思えなかったのです。
葛藤がなかったはずはないだろうに、言い訳しないようなところがむしろ好ましく。
希里もそうだし全体通して、自分が辛い時でも自分の感情を最優先できない人の切なさみないなのが覆っててそこがなんかじ~んとしちゃいました。
novel | 栗田有起
CM:4 | TB:4 |
| 日々是好日 |
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