読書の欠片ネタバレあり
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きつねのはなし  [Edit]
2006-12-28 Thu
 気がつけば実に1ヶ月ぶりくらいの読書感想だわ(…)。実はこの本借りるの二回目なんですけど、なかなか読み進められなかったのよね。文体とか世界観にするっと入り込めなくて…。京都を舞台にした奇譚集だし、好きな系統のハズなんだけどな~。慌しくて気もそぞろな自分の状態のせいかもですが。

 読売の新刊書評か何かでおもしろそうと思った本。作者はファンタジーノベル大賞出身なのねー割と最近なのに全然知らなかったわ。小さな骨董品屋でバイトする学生が出会う、きつねのお面と天城さんにまつわる怪異「きつねのはなし」、古いアパートの一室で妄想を語る先輩の思い出を語った「果実の中の龍」、京の暗がりからするりとすべり出る胴の長いケモノと幼なじみの高校生たちのどこか密やかな関係を描いた「魔」、明治時代の琵琶湖疎水に端を発する樋口家に伝わる水と祖父の死にまつわる出来事「水神」の4編が収められてます。

 語り手も時代もわざとぼかしてあるような文体で、それぞれの話も重なっているのにどこか空間がズレているようなパラレルな感じで、捕まえようとしてもするりと掌から逃げていってしまうような印象なのね。出てくる人々もなかなか腹を割って自分を見せてくれなくて、性格が読み取りにくく掴みどころがない感じ。その辺がなかなかするっと入り込めなかった原因かもしれないのだけど、物語自体もその掴みどころのなさが売りかなという気がするので、まあ一貫してる…んだろうなあ。

 不可解な出来事やヒトと魔との契約の気配、通り物、見えない裏側に密やかに潜んでいるモノの息遣い…どの話にもそういう雰囲気は感じるのだけど、何かが起こってだからどうなった、って話じゃあないんですね。龍の根付とか妖しいものが出てきそうなからくり幻燈とか、節分祭に紛れ込んでるなにかとか、気になる小道具や舞台も繰り返し現れるけど、説明は一切なし。そういう現実と妄想が混じり合ったような曖昧さ、ふっと現実の隙間に開く穴に落っこちてしまったような不安定さに浸かってみるのも一興かもしれません。

 好みとしては妖話でももう少し輪郭のはっきりしてる方が好きだけどね。こういう話なので、納得のいく説明や結末がないのは全然構わないんだけど、表題からしてどこか民話的な匂いのする話を期待してたら、どっちかというと怪談だったみたいな。ああ、「心情」より「現象」だけに絞ったようなスタイルも怪談だなそういえば。そして私は怪談の肝の分からない人間なのであったっけ…。ぞっとする怖さではないけど、あんまりかわいらしさのない、魔や闇というものの持つ冷たさを感じる本だったですね。妖話にかわい気を求める私が間違ってるような気もしますが・笑。

きつねのはなし 森見登美彦(新潮社)
novel | 森見登美彦
CM:0 | TB:0 |
| 日々是好日 |
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