読書の欠片ネタバレあり
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チーム・バチスタの栄光  [Edit]
2006-10-21 Sat
 昨年の「このミス」大賞受賞作。結構長い間ナゼか野球(チーム)ものだと思ってたのはこの際内緒ですが、バチスタと言えば「医龍」でもおなじみ心臓移植の代替手術のこと。肥大した心臓を外科手術で縮めて正常な収縮機能を回復させるのだそうです。日本では小児の心臓移植はできないため、リスクは大きいけれど期待も大きいでしょうね…。あ、タイトルは原題の「崩壊」より「栄光」のが断然いいですね、上手い。

 アメリカから心臓外科のスペシャリストとして東城大医学部に招聘された桐生助教授率いるチーム・バチスタは、26例のバチスタ手術を全て成功させるという華々しい成績を収め院内外の評価と信頼を勝ち得ている。それがここにきて原因不明の術中死が3例続いたことに不安を隠せない桐生は大学側に調査を依頼した。本来ならば内部監査機関であるリスクマネジメント委員会が請け負うべき仕事だが、大学病院の院内政治を勝ち抜きながらも単なる権威に収まらない切れ者の高階病院長が選んだのは、外科オンチで医局抗争にも興味のない窓際講師ながら医局内に「不定愁訴外来」というポジションをちゃっかり確保している田口。果たしてこれは医療ミスなのかそれとも故意の悪意なのか?嫌々ながらも田口によるチームの聞き取り調査が始まったー

 作者は現役の医者なんですね~。専門用語や大学病院の現状や虚々実々のウワサで築かれる人間関係といったところにしっかりリアリティがありながら、語り口が軽快ですごく読みやすい。バチスタ手術をラテンのノリと称したり、会話の駆け引きを野球に例えたりのくすぐりが効いてるのに全体として軽すぎない、なかなかのバランス感覚だと思うわ。昨今ホントにそういう科があるのかどうかは知らないけど「愚痴外来」の設定も面白くて、ただ聴くことで癒すという田口のスタンスというか特技がどう生かされるのかな~と、単に聞き取りファイルが並べられるというあんまり動きのない構成なのに飽きずに読み進めたし。

 しかしこれ実は医療ミステリじゃなかったのね。主役かと思われた田口はなんと第一部でリタイアして代わりに捜査官となるのが、厚生労働省の変人役人、ロジカル・モンスターこと白鳥。一応第一部と第二部はタイトル通りネガとポジ、二つで一つの補完関係にはあるんだけど、第二部じゃ田口は狂言廻しになっちゃうし医療的なテーマもほとんど関わってこなくて、新本格に近い感覚で読みましたです。大掛かりなトリックとかはないけど、この話の核は実は心理学で人間を読み解くテクニック自身にあるんですねえ。パッシヴ・フェーズとアクティブ・フェーズの実践モデル。これはこれで興味深くて面白く読んだんだけど、医療現場が抱える問題とか医者と命を考えさせるような医療ものじゃーないのだねと。医師の(特に才能ある医師の)業にはちょっと踏み込んでるけど、患者側の命の扱いは新本格並みかなあ。特に「お前だ」から犯人が自説を滔々と語るところなんか…ねえ?伏線張ってあるので気になったんだけど、犯人リターンズで再びゲームを仕掛けてこないことを祈るわ。

 ま、深いテーマ性のある現代ミステリではないですが、エンタメとして十分面白く、人間心理もなかなか頷けるところがあって最後まで楽しめました。桐生と鳴海の関係とか、東城大学病院のトップ・シークレットとか。愚痴外来の患者のキクさんなんて、田口の思惑を超えたところに人間の自然治癒力が隠れてたりして含蓄あると思ったなあ。このままあまり堅苦しくならずにエンタメ路線行ってくれればいいと思うけど、この人間観察力を生かして誰か中心に据えればもひとつ突っ込んだテーマ性のある「人間の物語」も描けるんじゃないでしょか。もうシリーズ2作目が出てるみたいですが…。

チーム・バチスタの栄光 海堂尊(宝島社)
novel | 海堂尊
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| 日々是好日 |
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