読書の欠片ネタバレあり
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芥子の花 金春屋ゴメス  [Edit]
2006-11-29 Wed
 近未来の江戸を舞台にしたファンタジーノベル大賞受賞作がシリーズ化。今回はタイトルどおりご禁制の芥子を追うミステリね。基本は割と正統派捕物帖なのよね。未来の「江戸」は今回もなかなかいい感じです。経費節減の合理性を導入しつつも敢えて不便を貫くことでしっくりくる江戸らしさ、異人街や流人島なんてのもうまくアレンジされてて、江戸市中だけでなく独立した「国」としてのリアリティがあるのが面白い。言葉の選び方や使い方もちゃんと江戸江戸してるので読んでて違和感ないしねー。あでも表紙は前巻のが粋でインパクトあったかな。

 江戸の交易や異国との諸事を捌く長崎奉行で、厚顔無恥・冷酷無比・極悪非道で名高い江戸一番の名奉行、金春屋ゴメスこと馬込播磨守寿々ちゃんの元、今日も青アザや怪我の絶えない配下たち。新入りの辰次郎と大荒れのゴメスをも投げ飛ばす柔術の達人・朱緒は、異国市で麻衣椰村の子供サクと出会う。江戸開国当時から小さなコミュニティを作っていたその村が、芥子栽培の疑いを掛けられて厳しい罰を受けることを知った辰次郎は、松吉とともに流人島へ潜入することになるー

 まあ今回は芥子事件そのものよりも、江戸と日本との微妙ーな関係がこれからどうなっていくのかの方が面白そうだったかも。芥子に絡んで朱緒がらみの話がメインになってたけど、どうせなら辰次郎と松吉に友情とか仕事とか人生とか見つめてほしかったかな。忍者修行もいいけどさ、三度の飯より喧嘩が好きで、売られなくても買いに走る甚兄ぃの活躍がもっと見たかったー!(そこか)密偵に入る辰吉を心配するおかんなとこも好きだ…。いやまあ、江戸の背景やディティールが面白いのは確かなんだけど、もうちょっと突っ込んだ人間関係バナも読みたいなと。辰次郎や松吉はまだまだ成長途中ですから。

 朱緒ねーさんもきらいじゃないけど、なんでDoしてDoのへんに惚れたのかよくわからないぜ辰次郎よ。それより江戸もどうやら外部からの動きが不穏だし、決して磐石な世界じゃない。そこに暮らす人たちや守っている人たちがどういう思いでいるのかとか、辰次郎がそこで何をしたいのかとか。それを通してこの「国」の意義みたいのが浮かび上がってくるといいね。辰次郎の、誰もが一度で懲りるゴメスに何度でも向かってく心意気は買ってるんだからさ。

芥子の花 西條奈加(新潮社)
novel | 西條奈加
CM:0 | TB:0 |
金春屋ゴメス  [Edit]
2006-02-21 Tue
 粋な装丁にインパクトのあるタイトルがいい感じに気になる^^。江戸ものか?と思いきや表紙の兄さんの腕には時計と、ん?携帯デンワ?…そうこれは日本ファンタジーノベル大賞受賞作なのだ。時は近未来、月にも人類が住む時代に、日本には「江戸」があった。30数年前開国した江戸は日本からの独立を宣言、対外的には日本の属領扱いだがその実鎖国制度で厳しく人や物の出入りを制限して近代江戸に倣った街並みや暮らしっぷりを守って、日本とは違う道を歩こうとしている「国」なのだ。

 この「江戸」で起こった事件をきっかけに、日本から辰次郎が呼ばれるところから始まるのですが…日本から江戸へ、この視点の移動がなかなかいい。ファンタジーなのにどこかリアルというか、すぐ隣にありながら別世界というか。近世江戸とは違うんだけど、今の日本にはないその「江戸な感じ」…舗装されてない道だとか歩いてどこでも行っちゃうとか灯の少ない夜だとかそこのリズムで生活する人々だとか土や雑多な匂いだとか…の存在感が。嘘臭くなくて江戸とそこに住む現代の人間が違和感なくミックスされてるな~面白い。

 近未来の「日本人」である辰次郎が、長崎奉行所での仕事や人間関係を通して段々「江戸」に馴染んでくるのがどことなく爽やかで生き生きとしてくる前半、そしてそもそも辰次郎が呼ばれることになった、江戸で流行りだした人為的な匂いのする疫病の原因を突き止めるという割と正統派捕物帳ちっくな後半…前半は辰次郎で後半はゴメス主役って感じもしますが(笑)。でも外枠は捕物帳でも実は「江戸」の存在に関わるとっても現代的なテーマが底にあったりしてやっぱり新しい感じ、かな。自然との共存を選ぶ時に捨てなければならないもの…けれど実際にそれが必要になった時、隣に行けばあるものを望まずに生きられるのか?きっと「江戸」には何度も同じ命題に晒されるだろうなあ。決して盤石な世界ではないけれど、でもそれを選ぶ自由があったらいいなあと思っちゃう。ゴメスが冷酷無比・極悪非道で守ろうとするその世界でなら、「自分ここで何やってんだろう」と思わずにただ無心に生きて行けるってのは何だか分かるような気がするから。

 後半ゴメスがカッコよくて(笑)辰次郎・松吉の男の友情ラインがちょい食われたよう気がしますが、この後の彼らも見てみたい感じ。あと甚三兄ぃには是非もっと活躍していただきたいv。ゴメスの過去とかも気になるし~…これでデビュー作ってんだからなかなか楽しみな作家が出て来たなーと。しかしこの作者この後ファンタジーに行くのか江戸物に行くのかどっちだろう…青春物も書けそうだし現代物でミステリってのもアリか?

金春屋ゴメス 西條奈加(新潮社)
novel | 西條奈加
CM:0 | TB:0 |
| 日々是好日 |
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