読書の欠片ネタバレあり
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対話篇  [Edit]
2005-12-08 Thu
 金城作品にはこれまでもタフさの中に「静」を感じていたので、この装丁やタイトルからして静かさを湛えてるこの本は、実はとっても金城さんらしいんじゃないかなーと思ってた一品。親しくした人が必ず死んでしまうという運命を抱えた男がたった一度の恋を語った「恋愛小説」、急病で死の淵にいる男が最後に復讐をしようとする「永遠の循環」、病気を抱えながら老弁護士と後悔と記憶の旅をする「花」の三篇。そのどれもが二人の人間の対話で形作られている。

 三篇とも「死」が重要なファクターで、作者自身あるいは若い時にゾンビーズにとってのヒロシのような存在の死を経験してるのかもと思ったりしたんですが、作者にとって死とはきっとすごく近いところにあるものなんだと思う。常に自分の隣に存在するもの。それは誰にとっても逃れられない運命ではあるのだけど、大抵はそれを意識せずに生きているわけで。でもそれを若い時に強く意識してしまったら…それをどうやって乗り越えるか?生も死も紙一重の中で見つける生の意味とは何なのか…?そういう思いがいつも根底にあるような気がするのです。

 「永遠の循環」は「SPEED」の関係者が出てきてましたねえ。というかこっちが先だったわけですが。「SPEED」では実はあの女性だけはよく分からない人だったんだけど、そうか別サイドの話があったわけね。うーんやっぱり彼女に共感はできなかったけど(^_^;;。でも殺し屋Kは印象的だったな。隣人のような死そのものでもあり、死に抗う存在でもあり。

 この中では「花」が好きかなー。三篇ともどこか非日常を描いたものなんだけど、「恋愛小説」と「永遠の循環」にはどこかファンタジーな味わいが、「花」には非日常のトンネルを越えて緩やかに日常に回帰していくような後味がある。具体的な生きる意味なんて分からないけど、情けない記憶も後悔も丸ごと抱えてそれでも生きていけるという実感が力強いのだ。

対話篇 金城一紀(講談社)
novel | 金城一紀
CM:0 | TB:0 |
SPEED  [Edit]
2005-08-04 Thu
 話の構成や流れは「FLY,DADDY,FLY」とほぼ同じ、でも今度の主役は女の子。男の描きっぷりがいい作家でも女性は妙に理想化されてたりしてうーん;っていうこともよくあるんだけど、金城さんは女の子も女性も自然でなかなか好感度高しv。主人公の佳奈子もフライ~の「おっさん」と同じようにこれと言って特別なところのないごくごくフツーの人なんだけどなんかかわいいんだ。真面目で一生懸命で、地道ーに努力するところ。時々弱音吐いてみるけどあんまり慰めてもらえないんでこっそりつぶやくしかないところ・笑。鈴木さんの「いじわる…」も可愛かったよなー。佳奈子は「いつか轢いてやる…」がナイスv

 今回は佳奈子の家庭教師でもあり憧れの女性でもあった人の自殺をきっかけに、有名大学の文化祭を巡る金と人脈を握る男・中川の企みをゾンビーズが阻止する。やっぱり「うまく世の中を渡って行けるヤツ」「そういう人間に動かされる世の中の仕組み」に対する挑戦状なのだ、このシリーズは。でもただ「悪」をバッタバッタと斬っていくような爽快さがウリじゃないんだなー。作者はいつも彼らを立ち止まらせる。「世の中なんてこんなものかと思うな」「頭で考えたことより、ハート(心)とソウル(魂)で感じたことのほうを大切にしろ」と。何のための、誰のための闘いなのか、勢いや怒りに流されて見失うなと。

 だから好んでトラブルに首を突っ込んで、一見やんちゃやってるように見えるけども、映像的には決して派手じゃない。むしろ静かな印象さえ与える。だから佳奈子のママのエピソードやヒロシの思い出や、最後にアギーのママと交わした会話が優しく響くんだな。佳奈子が跳んでみせるシーンもとても静かだし、そう言えばフライ~の舜臣の舞いも。ケンカ売ってハイスピードで駆け抜けていくんじゃなく、傷ついた人を見過ごさない優しさ。立ち止まって自分と向かい合う静かさ。実はこーいうとこがこの作者の持ち味だと思うのよね、うん^^

 主人公が女の子だからか(?)先生役に抜擢されたのがアギー。今までは情報屋としてちょっと離れたところから関わっていた彼の、年頃の男の子っぽい素顔が覗くのがよかったな。ここを出てもっと広い世界で生きるのが彼の望みではあるけど、この場所にも大事なものがたくさんあるんだ。「あいつらとちゃんとつきあうのって、照れ臭いだろ?」そう言ってクールに振る舞いながら「あいつら」のこともママのことも大好きなんですよ彼は(笑)。好きなものがたくさんあって、それでも飄々と飛び出ていっちゃうところがコスモポリタンな彼らしくていい。南方や舜臣には卒業後どんな世界が待ってるんだろう?どんな風に世界を渡って行くのか見たいなあ~。

SPEED 金城一紀(角川書店)
novel | 金城一紀
CM:0 | TB:0 |
【映画】FLY,DADDY,FLY  [Edit]
2005-07-20 Wed
 昨日ちょろっと時間が空いたので観に行ってきました~。さすが原作者が脚本だけあって、大事なとこはバシッと押さえてましたね。「何で自分がこんな目に」とか「勝つのは簡単だ、問題はその後だ」のところとかちゃんと。女ッ気がなくてサミシイからと愛の物語になったりすることも当然なく(よかった~・笑)原作通り、ただのヒーロー物、強くなって叩きのめしてスカッとでは終わらない映画になっておりましたv。反面、ほぼ原作通りなんで脳内スクリーンに先の展開が映し出されてしまって素直に感動しそこねた部分もあったけど…映像ならではのお楽しみとかスピード感UPで多少ハデにアレンジされててもよかったかな?特訓シーン割と地味目だったものね(我侭な)。あっでもいくつか原作になくておッvと思ったシーン、最初はゴールに辿り着くだけで精一杯だったおっさんが何も言われなくても次のトレーニングに向かうところとか。あと最後の1周の石を舜臣に渡すところとか。

 堤真一は期待通りカッコかわいかった!そんで岡田准一は期待以上だった!!(笑)いや~鍛えただけあって美しく筋肉はついてるし(惚~)、年下男役のような甘さがなくてゴツッと男っぽいし、公園の指定席に駆け上がった時なんて体重感じさせないくらい軽やかだし!岡田に関しては特別ハデな演出必要ないくらい静かな存在感あったと思うわ~。ごちそうさまでしたvv

 映画では原作では出てこなかった舜臣の家庭環境や過去バナがクローズアップされて、おっさんとの年代を越えた男同士の友情→疑似父子関係寄りにちょっとスライドしてましたね。怖かったから強くなろうとした、でも誰かを殴るほど大事なものを失くすような気がする…早く強くなってくれ、そういう舜臣と思わず頭ぐしゃぐしゃっとする「父親」のおっさんがよかったな。「俺を守ってくれ」ってのはつまり、子供が誰かを殴らなくて済むような大人(親)になってくれっていうメッセージだと思うので…。木の上のシーンの背景が作り物っぽかったのがちょい残念だったけど;く~~っあそこは遠くまで見遥かせるような風景だったらなあ~。ま、そんな都合のいい場所はなかなかないかもだけど。あ、木登り特訓の時に拝んでお供えしてくばあちゃんをちょいと期待してたんだけどなかったですね、残念~(笑)。あと「てへっと笑ってんじゃねえよ」は原作でも「そんな顔してこっち見んじゃねえよ(照れツッコミ←そんな言葉ない)」のがいいのに、惜しい!(あくまで好みで。どんな顔してんだろ~と想像するとにまにまと楽しいので)と思ってたんだけど、映像なんだからやっぱここは堤さんにやって欲しかったなと!<てへっ・笑

 ↑の分(?)はしょられて惜しかったのがスニーカー、無言で分かり合ってしまったけど何か一言あってもよかったのになあ~と。ああいう使い方も良いんですが、原作で二人で買いに行くとこ好きシーンの一つだったのよね。ジェットコースターで無意識におっさんの裾掴んでる舜臣より(映画ではこれもなかったけど)年相応の素直な顔が覗いて。あーっ!年相応の素顔と言えばアレ見て舌打ちする舜臣もすっごい期待してたんですがなかった………カルバン・クライン!!(じゃなかったっけ?笑)

 ていうか映画のよいところはそのまま原作のよいところだったので、純粋に映画だけの感想にならなかったわ。鷹の舞いもバスとの競争ももちろんよかったけど、何故か印象に残ってるのはジェットコースターの後、芝生の上に皆で寝転んでる何気ないシーンだったり^^。ラスト南方に背中押されて駆け出す舜臣もよかった。岡田=鷹の舞い、堤=アラレちゃん走り(オイ)だったのはご愛嬌ってことで・笑

 →公式HP
コメントを読む(3)
  by ざれこ
はじめまして。トラバさせていただきました。
私も原作読んでから観たクチなんでいいたいことはいっぱいで、
全部↑で言ってくださってるのですっきりしました。
「木登り鈴木さんを拝むおばあちゃん」は絶対いて欲しかったし、
あと夕焼けの作り物背景は許せませんでした(笑)
せっかくのいい映画がちゃちくなっちまうじゃないかー!
あと「スニーカーのサイズなんで知ってるねん」と鈴木さんにつっこみたくもなりましたし(笑)
一緒に買いに行ってたらそんな突っ込みいらなかったのに。みたいな。
すいません熱く語って。岡田くん、よかったですよねー。
また遊びにきます。ではでは。
>ざれこさん  by banri
はじめまして、読者大賞もやってらっしゃるざれこさんですね^^。TB&コメントありがとうございます。
アツく語っていただいて嬉しいです~(笑)
どうしても頭の中で本をめくりながら目の前の画面と照らし合わせてしまう自分の習性が悲しかったですが、いい映画だったですよね。
とにかくキャストがハマってましたし。岡田くんには今後見かけるとときめいてしまいそうな勢いです…特別肉体美をひけらかしてるわけじゃないのにフとした時にドキ☆としたりして。演技も本人が透けて見えるとこっぱずかしくなるもんですけど全然そんなことなくて完全に舜臣として見てましたし役者としてもすごいかもと…すいません岡田くんをアツく語ってしまって(爆)
お供え物が日々増えていくところとか、脳内ですっかり映像化されてたのであれ~?って。
夕焼け&夜景には何故か隣に向かって、いや本当はこのシーンこんなしょぼくないから!心の目で見て!と言い訳してました、心の中で(笑)
でも原作読んだ時と同じことを映画でも感じられたのは嬉しかったですね^^
  by ざれこ
こんばんは。反応遅くなりましたが、
読者大賞は誰でもいつでも参加OK!ですので
いつでもお越しください。大歓迎です。

どうでもいいんですがスンシン風ワークパンツを最近買いました。丈は短めなんですが、ポケットの感じと色合いが似ております。
あーこれでタンクトップを着れる二の腕であれば・・と思っている今日この頃。
・・・失礼しました。
media mix | 金城一紀
CM:3 | TB:1 |
FLY,DADDY,FLY  [Edit]
2005-07-05 Tue
 面白かったーv映画の先行ロードショーを見たような感じ。もともと原作自体がすごく映画っぽいのですね、うん。これは映画原作にピッタリだと思うわー^^

 「レヴォリューションNo.3」のゾンビーズが今回も活躍するのだけど、主役はあくまでダディこと鈴木一。この平凡な名前の中年男がゾンビーズ一の武闘派にして知性派の朴舜臣に弟子入りし、男として、何より「父親」として自分を鍛え直していく。愛娘が事件に巻き込まれて怪我をした、その復讐のために闘うんじゃないんだよね。娘を信じるよりも一瞬自分が傷つかないことを優先した自分を変えるため、もう一度父親として家族の前に立つために闘うのだ。ただ強くなればいいってものじゃない。どんな自分になりたいのか考えることーそれは青少年の専売特許じゃないのだよ(笑)。この動機付け、テーマもとっても今必要とされてるものじゃないか?少なくとも自分にはただ爽やかな夢物語じゃないリアルさがあったです。

 今回南方(本名だったのか…<オイ)やヒロシ、アギーや山下らは一歩後ろに引いているんだけど、それでも十分伝わってくる「らしい」動きが微笑ましくも楽しかった(笑)。そして今回のもう一人の主役はレヴォリューション~では一歩引いていた舜臣。前作ではあまり深く語られなかった彼の考え方や生き方が、鈴木との関わりの中で段々に見えてくるのがよかったー。彼の言葉には信念がある、つまりは作者の信念てことでもあるけど…食事は家で摂れとかね。暴力は自分に跳ね返るとか。暴力の連鎖から逃れる難しさを身を持って知っているだけに、そして舜臣自身がそこに捕まらない未来を求めてる努力しているだけに強く響く。そういえばレヴォリューション~(ダディ~より後の三年生時)でもついまたボコってしまい、「自省録」も「善の研究」も「暴力批判論」も、今まで読んできた本が全部無駄になっちまったと半泣きになったのは印象的なシーンだったなー。そして「また読めばいいじゃん」とちゃんと分かってて慰めてくれる南方がまたよかったんだ^^。がんばれよ、努力だv

 これこのまま映画にしても面白そうなんだけど、脳内スクリーンに浮かんでたのはちょっと前の日本映画っぽいどこかノスタルジックな雰囲気だったり。でも実際に観るなら現代ぽくスカンと突き抜けてカラッと力強いのがいいかもなー。どんな感じでしょうね~?あと〈鷹の舞い@モンゴル相撲〉はやってくれるのか?!(笑)さて見に行けるかな?

フライ、ダディ、フライ 金城一紀(講談社)※新装版
コメントを読む(2)
  by ふわ
とうとう読まれたんですね!
私はとうとう映画の前売り券まで購入してしまいました。
子どもにせがまれてアニメの前売りは買ったことがあるけど、自分の趣味の前売り券を買ったのは何十年ぶりかしら。
いろいろ調べたら、「FLY,DADDY,FLY」は、もともと金城さんが「自分も映画の脚本を書きたい」と持ち込んだ企画だったんだそうですね。
若者が老師に指導されて強くなっていく「修行もの」が書きたかったけど、同じじゃつまらないから、立場を逆にして「若者が指導する」にしてみたところ、ザ、ゾンビーズのめんめんがピタリとはまって、そのまま使うことになったとか。
私はてっきり、読者に人気の舜臣と山下をメインメンバーにするために作った物語なのかと思っていたんですが。
というわけで、脚本が先で、小説は言うなれば「ノベライズ」だそう。
だから、どれも映像が浮かぶ構成になっているんだなあ、と納得です。
ところで最新作「SPEED」も読みましたか?
こちらは、なんというか映画の配役をふまえて書いたのでは?と思えるシーンまであります。
評判が良ければ、きっとこちらも映画化するんだろうなあ。
ヒロインが誰になるか、アギーをやりこなせる人材がいるか、興味津々です。
>ふわさん  by banri
はいーすごく気に入りました、金城一紀。
これはもう読んでるのがそのまま映画みたいだと思ったけどそういうことだったんですねー。でも映像作品のノベライズって普通あんまり面白くないのに、これはしっかり「小説」でもあったし面白かった!
私も映画行きたいな~と思ってますー(ローソンだったか、オリジナル絵本がつく前売りがあったんですよね?ふわさんのそれ?)
SPEEDは今日事務所の新着棚に並んでるのを見たので、早速予約入れようと思ってるところです(笑)
novel | 金城一紀
CM:2 | TB:0 |
レウ゛ォリューションNo.3  [Edit]
2005-06-25 Sat
 新宿区内の有名進学校…に囲まれた陸の孤島、典型的オチコボレ男子校の人呼んで「ゾンビーズ」たちの冒険的日常。比較的短編が二つと中編が一つなんだけど、底に流れるものが同じなので読み応えは長編^^。主人公は中学までは優等生だった「僕」、沖縄米軍兵とのハーフで首相になると宣言しているヒロシ、在日朝鮮人で武闘派且つ知性派でもある舜臣、フィリピン人とスペイン人と華僑のハイブリッドで本物のコスモポリタンを目指すアギーなど、作者らしく「少数の側」を織り込んでいるけれど、彼ら自身はそういう枠から自由な魅力的な男の子たちなんだよね。あ、忘れちゃいけない「史上再弱のヒキを持つ男」山下もね(笑)

 表題作は毎年恒例の名門女子校学園祭への潜入、「ラン、ボーイズ、ラン」は恋もしつつ奪われた沖縄行き資金を奪還、「異教徒たちの踊り」はストーカー被害に合ってる女子大生の護衛兼捜索と、表向きはささやかにバイオレンスな日々だけどそれをただ勢いに任せて描いたものじゃあなく。無駄にはじけてないんだよね…むしろ彼らから感じるのは「静」かも。社会的底辺に近いところにいて時に我慢できなくなることもあれば、上手くいかないこともしょっちゅう。だけどそれを笑い飛ばしてただ前向きに、ってのとはちょっと違う。彼らはいつも考えているのだ、今が楽しけりゃいいわけじゃない、これから生きていく未来のことを。

 実際には話の核になるのは↑こういう冒険そのものじゃなく、病気に冒されたヒロシと花火だったり、死んでしまったヒロシを思い出すのが辛くて思いっきり身体を使うバイトばかりを選ぶ「僕」だったり、河口湖だったり(ちょっと違)山下だったり(だいぶ違)、踊り続ける男だったり。そしてその所々で核になる言葉がある。ドクター・モローもよかったな~<「努力だ」
 うん、へへへと笑って走り続けるタフなところもいいけれど、こういう言葉が響く静かなところがもっと好きだ。軽やかな中にしっかり地面を踏みしめてるような重みがあるのがこの作者の作風で、すごく合うところだなあ~。「フライ,ダディ,フライ」も楽しみっす^^

レヴォリューション No.3 金城一紀(講談社)※新装版
novel | 金城一紀
CM:0 | TB:0 |
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