読書の欠片ネタバレあり
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Op.ローズダスト 上・下  [Edit]
2006-07-21 Fri
 防衛庁特殊部隊ダイスと、この国が持つべき言葉への希いの物語と来たらこれはもう福井さんの独壇場ですね。しかも今年3月出版された時よりさらに状況がタイムリーになったような;。ここでほぼ壊滅したお台場来週行くんですが(…)、こーいうことが起こっても全然不思議じゃない気がする…というか、ホントに今の日本だよなーと思う。遺憾の意を表明してるその時もミサイルが飛んできてる呑気さが…自分も含めてだけど。今回Tプラスがバージョンアップした上に、実際それ使われて臨海副都心壊滅ですから「目に見える危機」は随分スケールアップしちゃいましたね…このまま行くと、作品増えるに比例してもっともっとと危機的な小説内状況を演出しなきゃいけなくなりそうで心配。あんまりソッチにばかりは走らないで欲しいですが、でもその底にあったのはやっぱりいつもの福井節でした。福井さんの描きたいのは壊すことでも再生させることでもなく、そういう大多数の人の中に今現在もあるものなんだよなーというのは今回もちゃんと伝わったです。

 オペレーション・ローズダスト。あわよくばの外交アドバンテージを狙ったものの9.11からの情勢の変化によって破棄された計画の生き残りたちが作り出す「状況」は、自分が今いる場所で新しい言葉を生み出そうとした存在を育もうとしなかった土壌そのものを掘り起こすかのように副都心を壊滅に追い込んでいく。彼らを利用し強引に国家改造をしようとする「集まり」は組織の枠を飛び越えて枝を伸ばしており、でもそれを阻止しようとする個人もまた組織の中に存在している。構造は例によって同じだけど、今回はどの陣営も日本人だというあたりがポイントでしょうか。考えないといけないことは外との関係じゃなく内側にあるんだよなというのがより強く出てたような気がするわ。

 前半メインになるのは、ローズダストと根を同じくしながら逸れてしまい、感情をなくしたままもう一度彼らと会って全てを終わらせるためだけにダイスの中で生きてきた朋希と、彼とコンビを組まされるハム(公安)の脂身・並河警部補。得意の組み合わせだし、どっか世慣れないズレた朋希の反応といいこういうタイプ描かせたらうまいよな~。最初は行@イージスと似たタイプかと思ったけど、朋希はもっと素直でしたね。行じゃなかなか覗かせてくれなかった訓練キャンプ時代の話でもその性格の違いがこの先の話を象徴してるかもしんない。そういう意味じゃやっぱり朋希が主役なんだけど、割とすんなり人間を受け入れる質の彼の話はFINAL Phase前に落ち着くべき場所に落ち着いたかなと。「集まり」の方は保身に回り動こうとする個人を静止したり組織同士の足の引っ張り合いが日本人らしく(…)黒幕としては弱かったけど、後半組織の中で自分のするべきことを全うしようとする男たちの引き立て役にはなってくれたしね。

 でも実は今回一番響いたのはローズダスト側だったのよねー。朋希の物語や並河との関係、組織や国の思惑を超えて「自分で」動こうとする男たちの物語もそれぞれに読み応えはあるんだけど、多視点すぎるとやっぱり一つひとつは弱くなるもんね。延々と続く「状況」にもかなり筆が割かれてるので「人の物語」がブツ切れになるのもちょい惜しい。だけどラストのローズダストたちの思いが語られるところには泣かされちゃって、チクショウやっぱり福井節にやられたーと…。イージスの宮津にも通じるところがあるけど、復讐だけでなく思想だけでもなく、自分の生をかけて誇りと意味を失わないために闘ってる人間には弱いんだよなー…。もうちょっと彼らの内面の話が読みたかったな。特に一功の思い…ラスト朋希の「ここにいるよ」に震える背中が、やっと見えた本当の一功だと思うから。リーダーとしての一功だけでなく、そういう素の姿を見たかった。

 そんなわけでとっても福井さんらしい物語だったのだけど、今回ちょっとマニアック度高かったような…。脇の人にまで人生があるのが福井小説で好きなところだけど、心理心情生き様だけでなく行動の一つひとつ、視線が捉える建物や街や武器の一つひとつに細かい描写がついててさすがに読み疲れました・爆。アクション描写なんてコ・マ・送りで見てるみたかったもん。普通ならさくっと読み飛ばすとこですが、なまじ福井節が好きなだけにもったいないと思って一生懸命読んでしまったけど。福井さんマニアだから(オイ)それぞれほぼ本物そのまんまで考証も現実に即してるんだろうけど、でもここまで細かく精確に描写されるとリアルさが却って薄れるような気がするのは私だけだろーか?もちょっとその辺、何もかも描かずに余地残しておいてもよかったような。その分ひとの心に焦点当ててじっくり読みたかったなという気もします。佐伯・矢島の解説ジャマさMax!

 ところでこれ文芸春秋じゃナイ。こんな同じ世界観で繋がってるんだから(729SOF育ってるしー)てっきり講談社かと思ったわ。

Op.ローズダスト(上) Op.ローズダスト(下) 福井晴敏(文藝春秋)
コメントを読む(2)
『日本沈没第二部』と比較して  by よっちゃん
このままで日本人はいいのかというテーマでは『OP』の「熱さ」が圧倒します。
『沈没』は正直、期待はずれでした。
でも『沈没』に好感を持ちました。
>よっちゃんさん  by banri
こんばんは。
福井小説はアツいですね、確かに。
国家論や防衛論はともかく感覚的に近い所も多々あるので基本的に福井節は肌に合うのですが、今回はちょっと読み進むのに時間かかっちゃいました;
日本沈没は昔のも今のも読んでませんがSFなんでしょうか…
novel | 福井晴敏
CM:2 | TB:1 |
今ここにいるぼくらは  [Edit]
2006-07-20 Thu
 「夏のロケット」から気になってていつか読んでみようと思ってた川端裕人。たくさん並んでた中からタイトルと装丁で割と最近出た(去年か)これを手にとってみた。んだけど…あれ?うーむ、多分好きそうと思ったのだがイマイチ気持ちが重ならなかったような…

 作者と同年代と思われる博士の小学生時代の思い出を描いた連作短編集。昆虫が好きでハカセと呼ばれるのがイヤだった1年生時代、5年生のガキ大将たちと川の始まりを探しに行ったこと。ホラ吹きと呼ばれてクラスでいつも一人なのに全然気にしないサンペイ君と学校の池のヌシを釣り上げた5年生の時のこと。オオカミ山でクワガタを育ててるオニババと出会った4年生の頃。コイケさんとUFOと宇宙の秘密に近付こうとした6年生の夏休み。太陽の高さが違う新しい土地で自分の居場所を見失った3年生、王子様に出会ったこと。転校生と天体観測と初恋の6年生の二学期の出来事。そして卒業間近の王子様の帰還と、今自分がここにいるということ。

 年代的に近いので分かる部分もあるんだけど(コイケさんでラーメンときたらアナタ…)、いかんせん博士の資質というか視線というかがかなり理科的科学的に傾いてるため、自分の子供の頃の興味関心と重なるところが少なすぎたのが敗因か;。それはそれで「少年の物語」ではあるんだけど、そこから大人へと向かう道筋にもうひとつこう共感できなくて、その出来事が大人になった博士にとってどんな意味を持っていたのかがよく分からなかったのだ…残念。

 途中、大人になった博士の独白が挟まれるところがあるんだけど、あれは誰に向かって話してるんだろう?それまでバラバラだったそれぞれの話が、今の自分に繋がる出会いと出来事だったのねという予感にはドキドキさせられたんだけど、最後ご帰還した王子様像の失墜の意味が分からず戸惑ったまま置き去りにされたみたいな…。川の始まりを探しに行った幼い日、ガキ大将のムルチが言った「ナカヘンデ。ナイタラアカン」とか、「ぼくたちは一人ぼっちだ。それも悪くない」と言えるようになった彼の、別々な誰かと同じ流れの中にいるという実感とか、所々ぐっときそうなところもあったんだけど、全体的には響きどころがちょっとズレてたかもしれません、スミマセン(誰に)。

 まあでも、大人になった博士は想像つくような気がする。天文学者になってたりしたら面白いのにな(いや中心にあるのは「川」だけど)。そういう「現在」の物語を混ぜてくれてもよかったなーと。宇宙の時間と人間の時間。大きな流れの中で寄る辺のないさみしさを知っていても、それは今そこにいる誰かとも未来にいる誰かとも繋がってるということ。それを知って大人になった博士と小学生の博士、現在と過去がカチリと合った時、この物語は私にも響いたんじゃないかと思うのだ。

 うーむもう一回、今度は「夏のロケット」行ってみよう…

今ここにいるぼくらは 川端裕人(集英社)
novel | 川端裕人
CM:0 | TB:1 |
ONE PIECE 42巻  [Edit]
2006-07-05 Wed
 始まりましたvsCP9。人数多いので個人戦、なのでしばらくはブツ切れも仕方ないかな。ジャブラ以下CP9居残り組にはさっぱり思い入れがないので雑魚には早めに退場していただきたいなと…って早速二人逝ってくれたか。この調子で誰も脱落せずにロビンのとこまで行って欲しいんだけど…う。サンジとチョパがピーンチ;<脱落

 アニキ・チョパvsチャパパ・ヨヨイ(名前なんだっけ…)。相手は雑魚いけど新ユニットのコントは和ませてもらったわ。アニキ小細工なし真っ向勝負で勝利じゃないっすか、強ェ。限界突破のチョパは一体どれだけ強いのか。意識のないアレを突き動かしてるのは破壊衝動だけなんでしょうか。ランブル効果切れはあるのか?自分を傷付けないうちに救ってやって~

 サンジvs秘書、改めナミvs秘書。最初っから女を殴らない騎士道を貫くつもりならこの組み合わせは無理じゃんよ;自分が死ぬことよりも、今はロビンを救えるかどうかなのに…そのことはサンジが一番よく分かってると思ってたんだけどな。「鍵のことはすまなかった」なんてらしくない~。ナミは見直してくれたけど、迷いで中途半端な負けだった気がして私的には微妙…アラバスタん時みたく頭脳戦で鍵だけ奪ってくれてもよかったんだけどな。次は絶対吹っ切って「らしい」バトルを希望(祈)。反対にナミは男らしくってカッコよかったー謎を解く鋭さといいツッコミといい「慣れてますから!」といい本領発揮っすね。…つーかサンジ…全身ぺたぺたするするやられたのか…そりゃ面白かったろ>カリファ

 ゾロ・そげvs動物園組。キリン…キリンって強い、の?いや戦闘モードのゾロの心を乱すあたり確かになかなか(違)。ここはカリファの鍵が届くまで漫才&逃げの一手?それともあの「刀」で新技披露かな。このユニットもおかし楽しいです。ゾロのもう一つのアイデア、ゼヒ聞いてみたかったな。

 ラスト、ルフィvsハトブラザーズ。の、前にぃ…なんだあ??<ギア3。アニメ用のミニキャラかと思ってたら違ったのね…(そこじゃなく)。体内エネルギーの分配を調節して特定の部分を強化してるんでしょか、ランブルボールみたいに。まあいいや、とにかく勝て。そしてようやく笑顔の戻ったロビンを取り戻してくれれば。

 バスターコールあんなウッカリってオイ。これは青キジに責任取って止めてもらわんとな。一体どこで寝てるのかあの男は…それとも何か裏で画策中?

ONE PIECE 巻42 (42) 尾田栄一郎(WJ)
comic | 尾田栄一郎
CM:0 | TB:1 |
「守り人」シリーズ  [Edit]
2006-07-04 Tue
 以前から読んでみたかったシリーズ。何となく堅苦しそうな印象があったんですが(根拠レス)全っ然そんなことなかった。ファンタジーに分類されるんだろうけど世界観はとてもリアルでそこに住む人々が生きてる。何より物語がすごく面白かった~好み好み。

 読んでて南大陸っぽい雰囲気だなあと思ったんだけど、そうそう作者はアボリジニの専門家(研究者?)だという話だったのでした。これがすごくよく分かる…私は文化人類学もアボリジニも門外漢ですが、自然の中に信仰や伝説が生きている感じ、天と地の距離が近くて「濃い」感じ…。今まで読んだことがない世界観で新鮮なのにどこか肌に馴染むのは、日本の古代にも近い雰囲気があるからでしょうか。自分の中の根源的な部分がすごく共鳴するんだなあ、世界だけでなく人間にも。

 名前や存在を示す言葉は耳慣れないものが多く、アボリジニの言葉そのものなのかあるいはそれを元に作ったんじゃないかと思うんだけど、これが世界観をよりリアルに感じる手がかりになってる。精霊や呪術が息づき、二つの世界が同時に存在(パラレルじゃなく表裏のように)する世界。外からやって来た民族と先住民族との世界観の融合や歴史があり、その周りにはまた別の神話と世界観を持った国々がある。狭く閉ざされたファンタジー世界じゃなく、本当にこの世界の一角に存在するかのような密度の濃い空気がまず魅力で、その上で語られる物語には生きることの力が満ちてるのです。


 「精霊の守り人」

 主人公バルサが30才の女用心棒というのが児童書らしくなくてまず驚き。新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムが100年に一度目覚めるという水妖の卵をその身に宿したことで王に追われ、バルサがチャグムを連れて逃げることになる。その途中で彼らは時代とともに忘れられかけていた、この国の成り立ちに関る大事な約束事と、目に見える世界<サグ>と同時に存在する目に見えない世界<ナユグ>を知ることになるのだ。

 外からやって来たヨゴ人と先住民族ヤクー…意図的に隠され、また交わることで失われていった知と歴史が、ヨゴ人の星読みとヤクーの血を引く呪術師トロガイとその弟子タンダらによって再び出会う物語もわくわくして夢中になって読み進んだんだけど、人物がホント生き生きと魅力的で。どちらに転んでも流されるだけで自分では人生を選べない幼いチャグムの気持ちもよく分かるし、自分自身幼い頃に故郷を捨てて流れざるを得なかったバルサの、用心棒としてしか生きられない思いはさらに深く沁み込んでくるものでした。バルサの怪我の手当てをし続けて見守り続ける幼なじみのタンダとの関係も気になるところだし、おちゃめでたくましい師匠も存在感あるわ。チャグム寄りで読めば児童書らしい少年の成長物語なんだけど、主人公はバルサ、さらりと描いてますがしっかり大人の話だよなあ~。大人だけどバルサもタンダもまだまだ迷い、生き方を探す道の途中なのだ。会話や文章もいいですね~ざっくばらんで易しい言い回しは、これだけの深い内容なのにストレートに響いてくるのです。


 「闇の守り人」

 自分の過去と、養い親であるジグロの思いと向き合うために25年ぶりに故郷カンバル王国へ帰ることにしたバルサ。父の親友だったというだけで全てを捨ててバルサとともに流浪の人生を送り、討手の友を殺し続けたジグロの胸にあったのは何だったのか。ジグロが殺した人の分救うと誓いを立てながら、闘いの修羅から抜け出せない自分がこれから生きていくために必要なのは何なのかー

 ヨゴに二つの世界があったように、カンバルにも二つの世界がある。そしてここでも同じように大事な約束事が失われかけているのだ。<山の王の国>でバルサが見い出したもの…それは結構衝撃でしたね。いや二つの世界がそういう関係にあることは何となく分かってきてたけど、そこで剥き出しになった想いは痛いくらい容赦のないものだったから。でもその苦しみも憎しみも本当なら、歓びも愛しさもやっぱり本当なのだ。自分の傷から目をそらさず見つめたその先にあるもの。鈍い疼きは簡単には消えなくても、それは逃げていては分からないことなんだよね。


 「夢の守り人」

 今度の「もう一つの世界」は花の夢、主役はトロガイ師です(断言)。花にしろ夢にしろそれ自体には善意も悪意もないんだけど、「胸の奥に眠ってるものを爪でかきおこすような調べ」かあーそりゃあ蓋するのはつらいな。そういうものに出会ってしまったら、今の自分じゃない自分に逃げ込まないで済むほど強い人間はそうはいないでしょう。「夢の守り人」とは昼と夜の境目で、惑う人々を連れ帰る呪術師のことなのだ。だから主役はタンダでもあるわけで、彼にもこれから先まだまだ乗り越えていかないといけないものがあるんだろうな。自分の呪術師のしての限界に悩むタンダだけど、いやーすごい強い人だと思います。

 チャグムとバルサの一夜だけの再会が切なかったわ。望みもしないのに背負わされたものを、それでも背負って生きていこうとするチャグムが泣かせます。シュガが側にいてくれるのは救いだなー王家には他にない広い視野と知識を持った人なので…。


 というわけでまずは最初の三部作を読了しましたが、早速続きを借りてくる予定。全然知らなかったんだけど、これ今からアニメ化実写化、そしてシリーズ最終三部作が刊行となんともジャストタイミンだったみたい。いい時に読み始めたわ~楽しみです。

精霊の守り人 闇の守り人 夢の守り人 上橋菜穂子(偕成社)
novel | 上橋菜穂子
CM:0 | TB:0 |
メディックス  [Edit]
2006-07-03 Mon
 かつてスピリッツに不定期連載され、当時西村しのぶを追い掛けつつもスピリッツ=メジャーだと油断してあえて本誌チェックをしてなかったため幻になってた「メディックス」が復刊というか初単行本化。懐かしいあの頃の西村テイストでしかも読んだことのないマンガを読めるというのが嬉しい。途中で終わってますが気にしない方向でひとつ。

 医大生たちのスクールライフ。昨今の西村マンガは女子の生き様系がメインなんで、男子がわらわらしてるのが新鮮ー。広瀬いいねえ、金と力はないが主夫ワザあり。弟ズの面倒見もいいし家族は仲いいし、医者の子弟組にない普通感覚が貴重。つっても島田や星野も好きですが。男の子ってかわいいわ。

 広瀬、今の西村マンガに受け継がれてるロン毛のハシリだし、女子もいないわけじゃないんだがイマイチ恋愛マンガにならないのは、ちょっとおバカでガキだから?それに意外と真面目に医学部ものだし。もしも連載続いてたらもっと恋愛に傾いてたかもしれないけど…だからここで終わっててそれはそれでいいかなと。西村しのぶの、このスカタンな感じ好きなのよねーなつかし~。

メディックス 西村しのぶ(IKKI)
comic | 西村しのぶ
CM:0 | TB:0 |
THE OTHER BATTERY(文庫版バッテリーV収録)  [Edit]
2006-07-03 Mon
 本編。以前書いた感想はこちら。今これ読むのキツいな…。巧の頑なさとか傲慢なまでの個人主義は、青波が「取り越し苦労」と言うように、きっと祖父が心配するような人を疎んでるとかそれじゃ本当の野球は分からないとかいう未熟さとは全然別のものなんでしょう。それが巧なのだ、ということはわかる。わかるけれど、理解されたいと思わない、他人は関係ないという孤高さを前にすると自分が取るに足らないものに思えてズキズキ傷ついちゃうんだよなあ。

 とは言え、この巻では巧にも自分自身掴みきれない感情が生まれてきてるわけで…。マウンドの外の豪を知りたいという思い。豪が怖い、豪にだけは軽蔑されたくないなんて、そんな言葉が巧の口から出るなんてすごいことだよこれは。おまけに他人と一緒にいることを重いと感じながらも、「一人で走ってても分からないことを知りたい」なんて。この巧の変化は豪も変えていくんだろうと、生身の豪との関係が変わることでバッテリーとしても一段上に昇っていくんだろうと…思ってたんだけどねえ。うーんでもすれ違い片思いで終わったからな…。いっそ最後まで一球を投げて捕る時の刹那の快感だけで繋がっていられたら、お互いに欲しいものがマウンド上の関係だけだったら、幸せだったんじゃないかとか思ってしまうな。まあそれも過程であって未来は分からないけどね。

 さて外伝。「横手の幼なじみ」でてっきり門脇瑞垣かと思ってたら「幼なじみバッテリー」だった…フェイント。瑞垣たちが卒業して三年生になった横手バッテリー。春のあの試合で巧の投球を目の当たりにしたキャッチャー城野は、マイペースな幼なじみ萩に物足りなさを感じ焦るのだけど…。萩の意外な大物さに驚き、自分の向こうにいるのは相手ピッチャーでなくお前(キャッチャー)なんだというシンプルな一言に自分たちの「バッテリー」の形を思い出す。キーは「バッテリーって、わかり合っちゃだめなんですか」「わかってない方が、おもしろいやないか」(by瑞垣)でしょうねー。んー…でも、やっぱりベースはこれまで一緒に過ごしてきて「よく知ってる」部分なんだな、この二人にしろ門脇瑞垣にしろ。どんなに反発しても「分かってしまう」部分が底にあるような気がする。

 それに対してホントに「分かり合ってない」二人、巧と豪。マウンドを挟んでピッチャーとキャッチャーだけという関係は、この二人にも一見当てはまりそうで微妙に違和感。爽やかすぎるから…じゃなくて、二人の間の「ボール」の存在感が大きいからか…。あまりにも激しく自己主張するボールに、自分が向かい合うだけで精一杯で相手を見る余裕がないのかもね。特に目覚めたばかりの豪は。幼なじみの二人が築いてきたような時間がないからなー。

 城野が忘れられない「あの試合、あの一球」。試合結果はどうあれ、多分門脇は打ち取ったんだろうな…と思っても大して感慨も湧かないのは、やっぱりあの勝負の結果は本筋に関係ないからなんだな。巧にとっても豪にとってもその一球はゴールでも完成された形でもないんだし。それとも豪の欲しかった最高の一球で二人の関係は変わり得るのか?だったらいいなあとは思うけど…そんな簡単じゃないだろうな~;

バッテリー〈5〉 あさのあつこ(角川文庫)
novel | あさのあつこ
CM:0 | TB:0 |
プロイスラーの昔話 全3巻  [Edit]
2006-07-03 Mon
 「真夜中の鐘がなるとき-宝さがしの13の話」
 「地獄の使いをよぶ呪文-悪魔と魔女の13の話」
 「魂をはこぶ船-幽霊の13の話」

 中世ドイツとその周辺の国々に伝わる昔話をプロイスラーが系統立て、それを改めて自由に語り下ろした3編。作者の「読む前にちょっとひとこと」にある通り大抵真夜中のお話で、気味悪かったり全然めでたしじゃなかったりする民話から採ってるのだけど、語り口はむしろちっとも冷たくなく、それぞれのお話の前にプロイスラー自身のちょっとした解説がついてるのも親しみが湧くというかあたたかい感じです。

 「宝さがし」にしろ「悪魔と魔女」にしろ、昔話には契約とか約束ごとが大事ですね。呪いも魔法も生活の中に生きている土壌自体にわくわくするというか惹かれます。「魂」は幽霊の話なんだけど、ポルターガイストってホラー専門かと思ってたら普通に昔話に出てくるものなのね…さすがヨーロッパ(違)。ファウストとメフィストテレスの話があったり(偉大な小説やオペラも元はこういう民話なのね~)、錬金術師として有名な方の名前が出てきたりするのも面白かったわ。

 これを読むと「クラバート伝説」も元はこのくらいの民話だったんだろうな。民話ってあくまで出来事を淡々と語ったもので、個々の心理までは深く踏み込まないものなので(だから却って普遍的で何らかの教訓を含むわけですが)、「クラバート」の心理の深さや人間像ってのはやっぱり作者の筆によるものなんだなあと思った次第。「悪魔と魔女」の巻にはその後のクラバートの話が収められてましたが、民話では親方との対決の後、見習いたちは解放されて魔法を自在に操れるようになるわけですね。「クラバート」では確か「親方から教わった魔法の力は失われる」だったと思うので、このあたりにも民話をベースにしながら作者なりのテーマが語られてるのねと思ったのでした。

真夜中の鐘がなるとき?宝さがしの13の話 地獄の使いをよぶ呪文?悪魔と魔女の13の話 魂をはこぶ船?幽霊の13の話 オトフリート・プロイスラー(小峰書店)
novel | プロイスラー
CM:0 | TB:1 |
| 日々是好日 |
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