読書の欠片ネタバレあり
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神の守り人 来訪編/帰還編  [Edit]
2006-08-31 Thu
 薬草の買い付けにロタ王国との国境付近に出かけたバルサとタンダが出会ったのは、奴隷商人に連れられた幼い兄妹だった。放っておけずに助けようとしたバルサだが、妹から発せられたすさまじい力が奴隷商人たちを切り裂き、兄にもバルサにも傷を負わせてしまう。妹・アスラからただよう死のにおいに、バルサが関わることを恐れるタンダだが、自分の過去とアスラを重ね合わせるバルサはアスラを連れて逃げることを選ぶー。しかしアスラの力はロタ王国の根源に関わるものであり、またこれからのロタを大きく変えかねないものだった…

 「虚空の旅人」でロタ王はチャグムと会ってるわけですが、その前後のロタ王国の物語がまず一つ。タルシュ帝国は北の大陸への足がかりとして直接ロタにも手を伸ばしていて、裕福な南部の大領主たちと北部の貧しい氏族たちとの間には大きな溝がある。そしてロタにもヨゴやカンバルと同じように建国の神話があり、影になって王家に仕える者たちと、かつて荒ぶる神を封じて以後決して国の表に出ないことを誓って陰の中で生きるタルの民たちがいる。封印が解かれアスラに荒ぶる神が宿ったことで、ロタの屋根骨を揺るがそうとする勢力が動き出す、と。

 この中心になるのが王家の「猟犬」として影に生きながら、現状に不満を持ちこの国のあり方を変えようとする若い勢力だけど、結局これはひとまず失敗し、火種を残したまま一応の収束という感じでしょうか。うーむ、シハナにもいい国を造りたいという気持ちはあるんでしょうが、チェス盤を眺めるような視点があんまり好きじゃないんだよな~ハートが感じられません。その点ロタ王とその弟イーハンは出番は多くないけど国を思う気持ちや人を思う気持ちがきちんと伝わってすごい立ってたので、この後のロタの話は是非彼らの視点から読みたいものです。国の中も外も嵐だけど、これをどう乗り切っていくのか…。ロタ王の健康がちょい心配ですが、一人で国を背負うのは辛いですから。この国は兄弟タッグで行ってくれるといいなあ。

 というわけでロタ国内のごたごたはとりあえず置いておいて、メインとなるのは「神」とひとつになってしまったアスラと、そしてやっぱり主役はバルサなんだよな。バルサの「生」の捉え方がこの話の心臓だと思う。いろんな立場の人がいて、背負うものも違えば守るべきものも違う。だからどれが正しくどれが間違っているとは言えないのが人の世だけど、その中でバルサは常に「自分として立つこと」を基準としてる。その姿に何より力づけられます。自分のために友を殺しつづけたジグロの痛みを背負い、自分の中の獣のような業と戦い、誰に否定されても自分を否定しないで生きること。バルサの言葉は自分にも他人にも厳しいけど、「生」と向かい合うその姿が言葉よりも雄弁に訴えかけ、ざわざわと震え揺れる心を落ち着かせて、静かに「生」を見つめさせてくれる。

 でもそういうバルサ自身も、それは強さじゃなくてあきらめだという。平和には慣れても人生に対する思いの薄さはなかなかなくならず、生き方を知らない赤ん坊なのかもと。アスラの業も重いけど、やはりこれはバルサの物語なのだ。アスラという存在を通して、バルサがどのように生を捉え、何を守るのか。これまではただがむしゃらに命を繋いできたけれど、これから自分の人生とどう向かい合うのか…バルサの気持ちがやっぱり一番の読みどころなんだよね。

 バルサとタンダ。バルサにとってタンダは大事な人間だし、想いもあるわけだけど、でもタンダが報われるかというと…ううむ、まだ当分難しいのかなあという気が;。秋風が吹けば旅心が出るし、穏やかな生活というものに馴染めないのは性格というよりももっと深く魂に刻まれててバルサに根ざしてるしな。そしてバルサってばナチュラルに攻だし<ラヴ(?)シーン。アスラも「お父さんみたい」だし・笑

 何百年に一度訪れるというナユグの春は、この後のシリーズでも重要ファクターのような気がするけどどんな影響を与えるんでしょうかね?タルシュなどの南の大陸では、北の大陸のような「この世と平行して存在する別の世界」は全然失われてるようだし…。北の大陸に迫ってる嵐とともに、この世界観がどうなっていくのかが気になるところです。そして、順番的にはこの次の巻で流浪の人になったチャグムですが、方角的にはロタに向かってるんだっけ?次の三部作ではストーリー的にもしっかり交わってきそうでだな。早くバルサと会えますように。

神の守り人<来訪編> 神の守り人<帰還編> 上橋菜穂子(偕成社)



novel | 上橋菜穂子
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2010-10-20 Wed 13:58 粋な提案
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